【感想】 2019年 安田記念

これは事故だ。

荒れた。というか、例年とは違う荒れ方をした。

人気的には単勝4番人気以内で決まったので「穴」が来たわけではない。

しかし。1番人気が3着で、2番人気は16着で入線後に下馬。結果、馬単で1万3千円、三連単は4万3千円もついた。三連複は安かったけど。

もしあのスタートの不利(事故)がなかったら……

(勝負事やギャンブルで出た結果に「たられば」は不要、と言われているが、競馬はそこそこ自分の意思と感情を持つお馬さんの競走をたらればで予想するのだから、結果をたらればの目で見るのもアリだと思う。それを次にどう生かすかは本人次第)

 

スタート直後のロジクライの挙動は変だった。犬が飼い主に呼ばれて一所懸命走っていくような、そんな内側への急転回と一目散ぶり

トロールビデオを観て最初に浮かんだのは、「オウム真理教が、人気馬の目にレーザーを照射して大波乱を起こし、多額の配当をゲットする計画を立てていた」という昔の週刊誌の記事だ。レーザー光線がどこかから発射されていないか、JRAにスタートからゴールまで検知ゴーグルをつけてレースを監視する係がいないと、今のご時世、平気でそういうことをする輩がいると、そう思った。でもよく見るとロジの挙動は ‘それでパニックを起こした’ 種類のものではなかった。

係員が驚かせた、観客の歓声に驚いた、ロジの大斜行の原因には諸説あるが、私はロジと武のコミュニケーションにズレがあったと観る。

隣の人気馬ダノンプレミアムは、‘常にゲート出がいい馬’ ではないが、ロケットスタートが決まったときの速さで知られる馬だ。ロジクライに騎乗した武は、ダノンの機先を制して、またはスタートを決めたすぐ後ろから「早々に内にポジション取りする」作戦を立てていたのだろう。それが手綱からハミを通して伝わったロジクライは、ゲートを出てすぐさま、「よっしゃ、左に行くんだな左に行くんだな、それっ」と、周りの動きを見ることもなく横に切れ込んだ。武としてはスタートから3~4秒の間に内のバラけたところに入るつもりだったと推測されるが、馬に細かい考えなどわかるわけもなく、ロジは ‘素直に自分が受け取ったとおり’ ゲート前を横切った。

忠犬ロジクライ。誰がそこまでガンバレ言うた。

 結果、15番ダノンから12番ロードまでの4頭が著しい不利を被った。ロードクエストは昨年6月から約1年間、休みなしにレースに出ていたからどのみち二桁着順だったろうが、ペルシアンナイトアーモンドアイダノンプレミアムには大災難だった。当日、乗り鞍を2鞍に限定して臨んだ武自身も不幸。武は、ロジクライを悪くても掲示板下に持ってくる腹でいたのではないか。実際ロジクライは、左回りをマトモな状態でマトモに走ればこの面子でも掲示板に入る程度の力はある(と思う)。ただ、7歳8歳を迎えた時、「自分に待ってる運命はこれまでのレースの結果次第で人間が決める」と知らないだけだ。

グリーンチャンネルで、ダノンプレミアムの返し馬の歩様を「おかしい、硬い」と指摘した解説者がいたらしい。そのため、ダノンのゲート出が速くなかったことと歩様の問題を重ね合わせ、「ダノンがあんなところにいなかったら他馬も影響を受けることはなかった、またはその影響が少なかった」とみる向きがある。が、この大斜行問題に関して、川田ダノンプレミアムとその調教師に責任の矛先を向けるのはまったくの筋違いである。

それにしても、あのような不利を受けて想定より後ろにつかざるをえなかったアーモンドアイは、負けたにしても強かったルメールの追う腕もすさまじい。直線で外に進路を取らざるを得ないロスもありながら、1着2着とタイム差なし。天栄で本邦最高峰のケアを受けたとしてもドバイ帰りの牝馬、アーモンドアイはグランアレグリアやサートゥルナ―リアとは別次元の馬だとつくづく思った。

スタートのやり直し、俗にいうカンパイができれば良かったが、発馬機(ゲート)の誤作動や故障、馬のフライング以外でのカンパイは行われていないらしい。

カンパイ (競馬) - Wikipedia

 

ロジクライがかけた迷惑のほうが大きかったからか、福永インディチャンプの直線での動きがあまり話題になっていない。福永は昨年のMデムーロばりの強引な競馬をしているが、審議になっておらず制裁も受けてないから、パトロールビデオを観た人でないとわからないかもしれない)

 

東京競馬場で行われるG1の中で、

安田記念は本来一番おもしろいレースだ

グリーンチャンネルに加入してなくて、予想ソフトも端末に入れてなくて、頼りはもっぱらスポーツ新聞、諸事情で日曜(の特に午後)はテレビもネットも観られない人でも高配に巡り合う可能性の高いレースである。

投資競馬、勝つための競馬を究めたい人は別にして、遊びで少額競馬をやってるけど「検討してるうちに混乱してくる人」や「単系馬券は怖くて手が出せない人」に向いている。今年はたまたまアーモンドアイとアエロリット、精神的に強靭な牝馬が2頭いて、その2頭ともが馬券内に入ったので三連複は安めについたが、枠連馬連の配当は三連複より高かった。それに、当日の新聞が手元にあれば近3年の安田記念の三連複配当を見ていただきたい。Mデムやルメールが東京マイルの流れに慣れた昨年の三連複は安いが馬連は高くつき、2017年2016年はともに1万円を超えている。

人気馬が故障したからとか昨日のような大斜行があったから荒れた、のではなく、大抵は人気馬が「人気薄の逃げ馬の様子を見すぎた」「直線の坂で脚があがった、または不利があった」のが原因で伏兵が台頭して荒れた。

昨日のレースで圧倒的1番人気馬が負けたのは、大外枠馬が大斜行した結果だから、もしそれがなかったら1番人気馬が勝っていただろう。しかし来年はわからない。再来年もわからない。アクシデントも込みで「安田記念は荒れるのが普通」と決めてかかったほうが当たりや勝ちに近くなる。

馬券の種類はたくさんある。買い方も複数の種類から選べる。1点100円の多点買いだって、当たりゃいいのだ。勝てればもっといいその自由度が一番高いG1が、安田記念だと思う

競馬が好きで、好きな馬もいて、

だけど自分を「馬券下手の素人」と思っている人にこそ

安田記念は当ててほしい。