【感想】 2018 チャンピオンズカップ

このレース、チャンピオンカップではなく、チャンピオン「ズ」カップと言うらしい。

地方・海外のチャンピオンが集結するわけでもないのに、なんで「ズ」なんだよと思うが、父親が同じでも「きょうだい」と言わないのと同じく、競馬の専門用語のひとつなのかもしれない(嘘)。

レースは面白かった。レースを和田・川田・横典のどれかが引っ張るとワクワクする。好きな騎手だからというせいもある。しかしこの三人は、自分の騎乗馬より人気になってる人馬にひと泡ふかせるようなレースをつくる。結果的に人気馬に負けたとしても、観る側の私は納得できる。<ひと昔前はそこに小牧や松岡もいたが、両方ともG1で見かけることが少なくなった。小牧は橋口弘次郎師の引退によって有力馬の騎乗依頼が少なくなったので仕方がないにしても、松岡はある時期から騎手という職業への執着が薄れ、それが今に祟っているように感じられる。>

 

1着 ルヴァンスレーヴ(Mデムーロ

前評判通りに強かった。素質(身体能力&気性)はもちろんだが、それを注意深く開花させた育成・外厩の勝利でもある。アーモンドアイのダート牡馬版と言っていい。

実況の民放アナウンサーはゴールよりも早い段階でルヴァンスレーヴの名前を連呼し、ゴール寸前からゴール後にかけて、しきりに「怪物!」と絶叫していた。ルヴァンスレーヴやアーモンドアイが、医療・食餌管理や育成に先端の科学的知見を導入され、意識・目標に叶うだけのお金と手をかけて送り出された競走馬の中でも特に優秀な馬であることは否定しない。が、「怪物」は言いすぎ。「怪物」と言うなら社台グループの意識と実行力を「怪物」と言うべきだ。

ともあれ、騎乗したMデムーロは、大阪杯以来の中央G1勝利。好きではない騎手だが、ちょっとホッとした(誰だろうが、落ち込んで打ちひしがれた顔は見たくない)。彼は学習能力が高くて、怖い騎手、イヤな騎手をよく研究している。このレースでは横典アンジュをマーク。逃げると踏んでいたのだろう。

ルヴァンスレーヴは、このレースを回避したチュウワウィザード(ノーザンF生産、個人馬主、父キングカメハメハ)と同い年のいとこ同士である。同じ一族&同年齢のいとこでも、外に出された母から生まれたタガノヒルクライム(父ハービンジャー)はダートを試されることなく、1勝馬のまま中央登録を抹消されている。同族の光と影と言ってしまえばそれまでだが、なんともシビアな話である。

 

2着 ウェスタールンド(藤岡佑)

先に結果を知っていたから2着とわかって録画を観られた。しかしリアルタイムで見ていたら、2着をミツバと誤認しそうである。それほど、ウェスタールンドは途中までレースに参加していたようには見えなかった。

スタートから向こう正面の走りを観る限り、ウェスタールンドは非力に見えた。言っちゃ悪いが、新馬でも混じっているのかと思えるほどに。それが3コーナー手前から一変。シタタタタ……と擬音が聞こえてきそうな忍者走りで、まぁコーナリングの巧いこと巧いこと。4コーナーで先団の数頭を除く他馬が大きく外に振られる中、ほぼピタリと内ラチに添った進路をとり、離されたビリッケツから5番手に浮上。

これは鞍上・藤岡佑の巧さでもある。中京のダートコースはコーナーがタイトな上に、1800m戦ではスタートからしばらく上り坂、3コーナーから下り坂、下りが終わるとすぐに急な上り坂と、かなりトリッキーな形状になっている。気がせいて追い出しのタイミングを誤ると外に振られて50m~70mは距離損し、損している間に直線のいいポジションを他馬にとられて右往左往することになる。しかし藤岡佑は、乗り馬の武器とコースを熟知して臨んだ。しかも彼は慌てなかった。ゴールまであと250mの地点で、ウェスタールンドと藤岡佑は前が開かなければ5着、よくて4着の位置にいた(慌てなさすぎだろ!)。斜め前にいたルヴァンスレーヴの能力が高い(ゆえに抜け出しが早い)ために恵まれた結果オーライだったが、慌てなかったからこそルヴァンスレーヴの抜け出しにすぐ反応できたとも言える。

たらればだけれど、逃げた1番アンジュデジールが早々に脱落していれば、勝ったのはウェスタールンドになっていたかもしれない。

全姉のミクロコスモスは、鋭い差し脚を武器にしながら、頭に血が上りやすくて重賞未勝利で終わったが、ウェスタールンドは去勢されて「我」がほどほどに収まった。他陣営の警戒さえ薄れれば、そのうち母ユーアンミーに初の産駒重賞勝利をプレゼントできるのではないだろうか。

 

3着 サンライズソア(モレイラ)

サンライズノヴァとソア、両方買った人が多そうだ。ノヴァとソアは成長曲線とコース適性、脚質が異なるだけで力差はそんなにない。一方が3着なのに一方が着外になったのは、展開の向き不向きと、ノヴァの差し脚が仰天レベルではなかっただけの話だ。

スタート直後のモレイラの動きには少々ひっかかりを感じないでもなかった。彼は「様子見した」ように見えた。穿った見方をすれば好意的な見方と悪意ある見方の両方ができる。しかし事実はモレイラ本人にしかわからないことなので、ここでは不明としておく。

ただ、この馬は4コーナーで大きく外に振られたにもかかわらず、前との位置関係を崩さなかった。それは多分にモレイラの腕によるところが大きい。日本にわざわざ短期免許をとりにくる外国人騎手は、さすが損失に対するリカバリーが素早い。

 

4着 アンジュデジー横山典

チャンピオンCまでの17戦で、牡牝混合戦に出走したのは2戦のみ。2歳暮れの500万下特別こうやまき賞と今夏の札幌エルムSである。それ以外は牝限街道まっしぐらだった馬の参戦を決めたのは、よほど調子が良かったからか。

相手は歴戦の古牡馬とスター候補や売り出し中の3歳馬。そして枠順は願ってもない1枠1番。ならば逃げるのが最善手。

逃げるだろうという予測はできても、急坂をしのぎきり牡馬の一線級相手に0.6差のあわや馬券内に健闘すると予知?できた人はどれほどいたか。私は無理だった。横典マジックでギリ掲示板ならあるかもしれないとは思ったが。

横山典氏はやっぱり巧い。ペースを機械的に判断すればスローの2ハロンよーいドン。しかしこれはダートという名のサンドレースである。ハロンラップで12.5以上に落ちたのは最初の1ハロンと3ハロン目だけ。ダート馬場良の流れとしてはかなり厳しい。横典は騎乗馬ができないことはしないから、「できる、やれる」確信があったのだろう(それはレース後コメント「これくらい走っても驚くことはない」にも表れている)。おそるべしヨコテン、おそるべし昆貢

 

5着 オメガパフューム(Cデムーロ

社台生産馬にしては使われて、年明けデビューから8戦め。ヒラボクよりはマシ(ラターシュは年明けデビューで10戦め)だけど、それでよく掲示板に踏みとどまった。人馬は頑張ったが、疲れには勝てない。来年が心配である。

 

 

眠いので 感想は5着馬まで……。