【反省】 2019 桜花賞(シゲル項に追記あり)

敗因は、藤沢和と8枠の軽視に尽きる。グランは買ったけれど「外厩しがらき」勢を上位にとってしまった。

8枠にはシゲルとプールヴィルがいた。シゲルは「前走で力を出し切ったろうから出がらし状態に違いない。それにフルゲートG1の8枠じゃ経験不足が露呈するだろう」、プールヴィルは阪神JF以来の期待馬だが「410kg台の小柄に大外18番は厳しい」と見て切った。クラシック緒戦を(馬券的に)勝って弾みをつけるには、買い目を減らす必要があって、そのためには極端な枠の馬を切り捨てるのが手っ取り早い。8枠を軽視することで検討対象を1枠~7枠の馬たちに限定できる。しかし賢いやり方をしているつもりでバクチに負けた。

 

1着 グランアレグリアルメール

朝日杯でデムーロ&マーズの強襲に遭い、3着。デムーロルメールアレグリアを意図的に脅したように見えたので、強いといっても2歳牝馬、メンタルが心配だった.

馬は感情記憶が強いらしいが、3か月半のブランクはリセットにちょうど良かったようだ。レース映像を観ると、グランアレグリアは朝日杯時に比べて「直線を向いたときの脚のもたつき」が小さかった。朝日杯は東京マイルを2度圧勝して臨んだ初の右回り、そのもたつきの瞬間をデムーロに狙われたのだが、外厩でしっかり右回り対策と「いきなりの接触」対策が施されたのだろう。

レース後、ルメールアレグリアオークス展望について問われて言葉を濁している。血統的には、前向きすぎる気性をバックパサの陰支援で抑えているので2400mを「こなせないことはない」。が、勝ち負けとなると、ルメールとしてはフラワーカップを勝ったあの馬の方がいいのかもしれない。

 

2着 シゲルピンクダイヤ(和田)

チューリップ賞の翌日、馬友と「シゲル馬がクラシックで2着や3着にでもなったらおもろいな」と話した。直線で猛追した脚には見どころがあったし、調教師はナリタトップロードの主戦だったナベちゃん、鞍上はかつてテイエムオペラオーの主戦で 今は<刺客忍者>と化した和田なのが好感度大。いやが上にも盛り上がって、そのときは結構本気でピンクダイヤを(何かのヒモで)買うつもりだった。なのに本番が近づくとすっかり忘れた。←競馬あるある。

終いの脚が使えたのは出遅れが幸いした面がある。しかしそれだけではなく、4コーナーから直線、後ろから4、5頭目の外を走っていたピンクダイヤは、和田のリードに従って周囲のどの馬よりも速くポジションどりを開始、馬群を縫って、内回りコースの内ラチが延びるところでは前から5頭目の内目に進出している。和田の技術と判断力はもちろん、ピンクダイヤの「ひるまなさ」も大したもの。いくら大胆で巧い騎手が乗っても、馬が指示どおりに動けなかったらどうしようもない。

シゲル冠名馬には使い倒されのイメージがあった。たくさんの馬を安く買いたたいて、たくさん走らせて小銭を稼ぐ、それがシゲル馬主さんのイメージで、まさか秋のデビューからチューリップ賞までにわずか2走しかさせない馬がいるとは思わなかった。これまでのパターン?では、連闘でデイリー杯2歳S、そこで負けたら500万下に出して、また負けて500万下やオープンに出走、3月には5、6走していても不思議ではなかったからだ。ピンクダイヤがそういうローテを組まれた馬ではないことで「シゲルの期待馬」なのはわかったが、私の深層にチューリップ賞2着をフロック視したい気持ちがあったのだと思う。

調べてみると、ピンクダイヤのセリ取引価格は税込み1,728万円。国内産のシゲル冠馬にしては破格に近い高値だ。ピンクダイヤの母ムーンライトベイは、もともとノーザンの輸入牝馬の産駒(初仔)だが、繁殖として第3仔出産まではノーザンにいて、2013年のジェイエス繁殖馬セールでディープブリランテの仔を受胎した状態で売りに出され、357万円(税別?)で天羽牧場に買われた。

ノーザンがムーンライトベイを放出した事情はよくわからないが、ムーンライトベイの産駒で、競馬で勝利したのは地方・中央含めて第6仔のシゲルピンクダイヤが初めて。ピンクダイヤの母系三代母の父がノーザンテーストと父~母父まで同血の  The Minstrel なので、ノーザンテーストを母父に持つダイワメジャーとの配合で「走る遺伝子」が覚醒したのだろうか。

レースレコードになった桜花賞で、シゲルピンクダイヤは上がり3F最速を記録した(32.7)。これでピンクダイヤは、未勝利~チューリップ賞桜花賞と、3戦連続で上がり最速の脚を繰り出したことになる。

なかなかに世知辛い出生背景を持ち、大手外厩とは縁がなさそうな、こういう駿馬を買えなかったのは痛恨の極みだ。

※追記 シゲルさんは2016年産47頭購入。いずれも宝石の名前か宝石にかかわる擬音をネーミング。うち、「シゲル○○…ダイヤ」と命名された馬は購入価格が1000万円を超えていることが判明。シゲルさんの中で一体どういう心境の変化があったのか。なお、高額馬のうち、シゲルクロダイはこれまでどおりのシゲル&ブルベアローテで現在13戦未勝利

 

3着 クロノジェネシス(北村友)

いい馬である。過去記事にも書いたが、日本の馬場には重めと感じられる血統馬が好みである。 

tumaranaimonodesuga.hatenablog.com

母父がフレンチデピュティ系のクロフネなのもいい。牡馬は競い合うことをあまり好まなさそうな、のっそり晩成になりがちだが、牝馬はレースでしぶとく粘る。そこに切れる脚もあるから、クロノは悪くても2着は確実だと思ったが……。

北村クロノは直線入り口で外をかぶされ前は詰まって、進路取りに迷った一瞬の隙をついて右外を和田ピンクダイヤに抜かれた。そのあとも緑帽が壁になり、接触もあって外に出したいのに出せない状態が続いた。クロノジェネシスはゴールまであと150mというところでぐんと伸びていた。それだけにもったいないレースだった。

北村友にいい意味のちゃらんぽらんさがあれば、ごちゃついた中でも活路を見いだせたのではないだろうか。

 

4着 ダノンファンタジー(川田)

チューリップ賞に出ることを知って、「何故わざわざ?」と感じた。桜花賞の出走に、ダノンファンタジーの賞金は十分すぎるほどある。チューリップを使うことで、前哨戦をまったく使わないグランアレグリアより疲れが残るのではないか。外厩でどれほどハードな模擬戦をしようと、1回の実戦に比べれば神経的な疲労度は小さい。実戦には長時間の待機があり、いつもざわついていて、沢山の人の目と沢山の大声、(馬には)奇矯な音にしか聴こえない演奏が神経をすり減らさせる。

ダノンファンタジーの馬体重は今回が+2kgになっただけで、前4走は増減なしで来ている。厩舎サイドの努力もあろうが、体質は強い。しかし体質とメンタルはまた別のものだ。

すでに除外されないだけの賞金を持っている2歳~3歳の有力馬に前哨戦を使うことの是非を問うつもりはない。ただ敵に勝ちたいのに敵にハンディをくれてやった形で臨んだのが残念だ。

 

5着 ビーチサンバ(福永)

福永騎手のレース後コメントのどこを読んでも、残り1000mで前に進出した理由がわからない。結果論だが、新馬クイーンCで鋭い上がりを発揮しているのだから、馬群が固まる3コーナーから4コーナーでポジションを上げて直線に賭けてもよかった。

あるいは、もしかしたら……オークスを照準にして “どれだけ長い脚を使えるか” 試走してみたのかもしれない。それが実を結ぶかどうかはフタを開けてみないとわからないが。

 

6着 プールヴィル(秋山)

大外から逃げて良く頑張った、としか言えない。

桜花賞全出走馬の中で、父系母系のどこにもサンデーサイレンスが入ってないのはこの馬だけである。体も小さい。なのに大外18番。枠順を知って「いじめか!」と思った。

阪神JFを振り返った過去記事の中で、私は “今回の当日馬体重426kg、体重はこれを下限にしてもらいたい。” と書いたが、410kg台のほうが頑張れるようだ。

馬体の壁、マイルの壁が立ちふさがっている以上、これから先も厳しい戦いが待っている。しかし先祖帰りを企図したような配合に馬産家のプライドと執念が見てとれるので、ここで見離すわけにいかない。1400が得意そうなので、距離をもし伸ばすなら400で割れる距離でなく、1500や1800、そして真ん中より内目の枠が引けたらなんとかなりそうな気がするが、どうだろうか。

 

7着 エールヴォア(松山)

内枠を生かせず後ろからになったのが全て。追い切りこそそれなりだったが中間の調教は慣らしのみ。遠征後の中2Wではまだ疲れが残っていたと考えるのが自然。

この馬、母フィーリングトーンの仔としては初の中央勝ち産駒(第5仔)。

マイルは未勝利なれど1800と2000で勝利していて(いずれも阪神)、2回関東に遠征して2回とも3着以内なのが面白い。フラワーCの勝ち馬に逆転は難しかろうが、2週間と少しだけでもリラックスと馬体メンテに努めれば、5月東京で健闘がありうる。

 

8着 ジュランビル(松若)

猛烈なスピード馬である。桜花賞では、マイル未経験の鉄砲娘が馬券に絡むことがままある。2週連続で強い調教を施してさえいなければ、買い目に加えていた。厩舎サイドの不安はわからないでもないが、勢いに任せすぎた。

この馬も、母馬の初中央勝ち産駒である(第7仔)。母アリーの出す仔の馬体は、いつもそんなに悪くないのにさっぱり結果が出なかった。血統書詐欺を疑ってアメリカに怒鳴り込んでもおかしくなかったが、これまでは相性の難しさがあったのかもしれない。

 

9着 シェーングランツ武豊

馬が寂しがっている。

 

10着 アウィルアウェイ(石橋)

マイルが未経験なことより、武器(特性)がはっきりしないのと、父系母系全体でみて3歳で頭角をあらわすタイプではないと判断したので買わなかった。しかし高野厩舎の調教の工夫には好感を持った。前走フィリーズレビューでは、2週連続強い調教をした。そのせいかどうか、レースでは興奮してかかりっきりになり、1番人気7着。今回は中間と追い切りを、ダリア賞の時と同じくらいのメリハリをつけた内容に変えてきた。本番・桜花賞では結果が出せなかったが、外厩まかせにしないことで蓄積できる「知」はきっとある。