【感想】 2019年 優駿牝馬(オークス)

 結果知って、いささか後悔。

このレース、ろくに検討する時間が無かったからケンしたが、当日の朝アップした記事の2頭の複勝くらい買えばよかった。ウィクトーリアは4着だったけど、素質馬の一番手に挙げたレンブーケドールが12番人気の2着、複勝で1400円もついてる( "・ω・゛)

お金の神様、いい子にしてるからもう一度チャンスください……(´;ω;`)

 

「従来のレコードを大幅更新 !」の大安売りは、ジャパンカップの前だけでなく、ダービー前にも行われるようになったようだ。これでもしJRAが、本気で「サラブレッドが進化した!もっと速く走れるようになった!」とやったら、JRAはアホの極みだ。時計なんぞトラック(コースの地盤)コンディションでどうにでもなる。

ノーザンさんとJRAの造園課は一体だ(と思う)。5月の造園(高速馬場化)は7月の牧場見学とセレクトセールに向け、11月の造園(高速馬場化)は海外のマスコミ・競馬関係者に向け、ノーザンさんが売り出したい種牡馬の仔や繁殖牝馬の仔をアピールするいい機会だ。

JRAを管轄する省庁は農林水産省で、監督は「生産局畜産部競馬監督課」という長い名前の部課が行っている。が、役人だから、経営委員会の取り決め一切はノーザンさん(に、ちょこっと社台さん)の提案と舵取りにお任せしてる可能性が高い。そこで方針に異を唱える馬産家経営委員もいるだろうが、興業的成功を「ノーザン+社台」に依存している以上、羽虫の抵抗にしかならない。

吉田一族の長男さん(社台)と次男さん(ノーザン)、これの力関係が逆転したのはディープインパクトの登場が大きい。リーマンショックで連鎖的に経済パニックを起こした日本で、次世代の競馬熱と投機欲を継続させたのはディープインパクト産駒への期待だ。ノーザンにとってはもちろん、JRAにとっても、ディープインパクトは大救世主なのである。

今年のオークスでは、そのディープインパクト産駒がワンツーを決めた。ディープが種牡馬入りして十年以上経っているが、上級産駒の特徴、クッションが利きすぎる高速馬場でも股関節や人の体で言う足首や指を痛めない柔軟性と強靭さがいまだ衰えず遺伝されているのがすごい。

 

下記に着順ごとの各馬雑感を書いてみる。父馬名と生産牧場名の半角カタカナが、環境依存のために読めなかったらごめんなさい。

 

1着 ラヴズオンリーユー(ディープインパクト・ノーザン/Mデムーロ

前に行きたがる馬や、前に行くことでしか結果を出していない馬たちの怒涛の先導を眺めながら、Mデムーロ、「してやったり」。最少キャリアの3戦3勝、堂々の1番人気で見事に勝利。しかし馬主さんがDMMじゃなかったら、2番人気か3番人気だったんじゃなかろうか。「忘れな草賞を好タイムで勝利、血統的にはリアルスティールの全妹で、3戦全てで上がり1位、外厩はしがらきを使用」――買い材料は多いが、重賞未経験で多頭数競馬も初めて。外厩で左回り対策を十分に施されていたとしてもキャリアに不安があった。

DMMは社長さん以下みんなが山師(詐欺師という意味じゃなく)っぽい。早々に1番人気になったのは、彼ら彼女らが1人1千万円~数百万円単位でラヴズの単勝を買い、それを見た外部の競馬投資筋も資金投入、一般ファンもひっぱられ…と想像する。

結果を伏せた状態で各馬の調教を見てみたが、ラヴズオンリーユーの動きは確かに良かった。それに1週前はMデムーロが騎乗して特早時計を出していた。若駒の、特に牝馬に限っては、馬任せで軽快に飛ばす調教スタイルを私は良しとしない。だが、どうもこの馬に関して、矢作調教師は「行く気に任せた方が、馬が満足して本番で結果が出る」と判断したようだ。中にはそれがベター or ベストな馬もいると勉強になった。

過去のマスコミインタビューを思い起こすに、矢作師も相当に山師メンタルがお強い方である。そこにヒャッハースイッチがすぐオンになるMデムーロと、生粋の山師メンタルの馬主DMM。このトロイカ、悪魔的だ。馬が違っても、今後も要注意の組み合わせだろう。

 

2着 カレンブーケドール(ディープインパクト・社台/津村)

軸馬のヒモにしていた人は多かろうが、単複人気が無かったのは、ただ1頭の中2W馬であることと、騎手ツムラが主な要因だったか。しかしそういう馬が、前目で粘って早め先頭、結果的に勝ち馬の末脚に屈したが、僅差の2着でゴールするのだから競馬は面白い。

2勝目が遅かったのは、力がありながら何かが噛み合わなかったからだ。が、前走から騎乗の津村、騎手生命を賭けて真剣にこの馬とレースに向き合ったようだ。リーディング下位ではないが、あまり芝レースに乗らないので知名度微妙、成績も微妙な騎手とあって、今回の2着に対し、「馬に助けられた」「もっとうまい騎手が乗ったら勝ってた」との声がある。もしルメールが騎乗停止期間中でなく、空いたレーン騎手にカレンの手綱を依頼していたら勝っていたかもしれない。けれど、このレースで、2コーナーを回って向こう正面に入るあたりでフェアリーポルカをかわして馬を外に出したのは津村であり、それは間違いなく彼のファインプレーだ。直線で前に立つタイミングが早すぎて勝ち馬に差されたのは事実だが、敵はラヴズオンリーユーだけではなかった。津村は、自分ができることを精いっぱいやったと思う。

大一番で津村継続騎乗を決めた国枝師、馬主の鈴木隆司氏に感謝したい。古い競馬ファンの私が観たいのはこういう競馬だ。

レンブーケドールの母父はストームキャット系のスキャットダディ。勝ち馬のラヴズオンリーユーの母父はストームキャットだから、この2頭は血統的に近い。

母系を見ると、ラヴズのMr.Proは3代、Crimson Satanは5代にいる。一方、カレンのMr.Proは4代5代6代にひとつずつ、Crimson Satanは母父がストームキャットの曾孫だけあって遠くの8代にいるが、その遠さを補うように、Crimson Satanの父Spy Songや祖父Balladierを6代7代に配してある。ただ、ラヴズの血量には、それらの大元 Black Toneyから出た別の流れ、Blue Larkspur(マームードと並んでSSに濃い血脈だ)が多いので、血統的闘争心という点でカレンはラヴズに一歩譲るかもしれない。

しかしながら、ラヴズの母系にさらにChop Chopやミエスクという強みがあるように、カレンの母系にはHawaiiのクロス(本馬から見て6×6)がある。Hawaiiは、若駒のうちこそマイラーだったが、古馬になりアメリカに渡ったあとは11ハロン芝のマンノウォーステークスを制したように、距離の融通が利く馬になっている。

……客観的に見ると、母系3代に名牝ミエスクが鎮座している(2代母がキングマンボの全妹なんだから当たり前か)ラヴズに比べて明らかに分が悪い。だが、そこを敢えて、将来に期待!と強弁させていただく。

 

3着 クロノジェネシス(バゴ・ノーザン/北村友)青文字は 05.23 12:20修正部分

GⅠで勝ちきれないのは何故なのか。調教でもレースでも、多少のイレコミはあれど騎乗者の指示に従って素直に走るし、踏ん張りも利く。父バゴと母父クロフネその父フレンチ)の評価を同時に高めてくれた馬である。ラグタイムガールやレッドゴッドにお祈りすればG1勝てると言うのなら、わしゃなんぼでも祈る。

 

4着 ウィクトーリア(ヴィクトワールピサ・ノーザン/戸崎)

赤松賞後のまとまった休養で馬が変わった。今回の敗因は位置取りが後ろ過ぎたことだろう。ここまで前が止まらないとは、戸崎騎手、予想外だったに違いない(直線で内に入れたことの良し悪しは正直わからない)。

調教はかなり変則的だった。他馬が調教場にほとんどいない曜日に、ゆったり軽めに走らせている。疲れが出やすい上に、他馬を怖がる面があるのかもしれない。タフなレースだったのでまずは休養、そうして次走は馬の状態を優先して決めてもらいたい。

 

5着 ダノンファンタジー(ディープインパクト・ノーザン/川田)

レース映像で、4コーナーを回るところから直線~ゴールまでの8番ダノンファンタジー(青帽)と7番の馬(青帽)の位置関係と挙動を見ていただきたい。パトロールビデオじゃなくても判るくらいにダノンファンタジーは度々7番の挙動に邪魔されている。川田、きみは加害にしても被害にしても不利を呼ぶ男なのか。

ダノンファンタジーの距離適性は、よくわからない。問題はレースでかかるところがある点で、それがほどよく解消されれば1400mでも2200mでもそれなりに走ってしまいそうだ。スプリント~マイルに特化させるのが一番工夫が要らない選択だが、中距離の可能性も捨てがたい。

秋からどの路線を選ぶにせよ、6月デビュー以降、2016年産牝馬戦線を牽引してきた1頭である。骨休み後の成長ぶりを楽しみにしたい。

 

6着 シャドウディーヴァ(ハーツクライ・ノーザン/岩田)

父系母系ともに晩成寄りのせいか勝ち味に遅い。

母系の奥にスカイマスターのクロスがあり、スカイマスターの母Disciplinerのクロスは本馬から見て7×7×8。このクロスがあることで本質はスプリンター??と思わせるが、新馬からほとんどのレースで2000mを使われている。また、3歳牝馬限定とはいえ2400mでこれだけ走った以上、中距離~中長距離馬と見るのが妥当なのだろう。ノーザン生産馬なので、幼駒のうちにプラスビタール・スピード検査(ミオスタチン遺伝子型で距離適性を測る)を受け、そこで中距離型と判定された可能性はある。兄姉は短距離でしか勝ち鞍を挙げてないのに、父馬がハーツクライに変わっただけで濃いめに入ってるナタルマのクロスが干渉発動したのだろうか。よくわからん。

オークスでの掲示板下入着は、岩田の川田マークも功を奏した。川田は「各局面でいかにして好ポジションをとるか」をいつも意識して乗っている騎手だ。失敗することもあるが、ナイスポジションで追い出すことが多い。だから他の騎手にマークされやすく、不利の加害被害の対象者になりやすい。今回の岩田は、ゴンベ(川田)が撒いた種をほじくるカラスかストーカーみたいだった。

  

7着 シェーングランツ(ディープインパクト・社台/武豊

482kgでデビューして桜花賞時は462kg。そしてオークスでは458kg。どんどん体重減っている。この牝系、もしかしたら競走よりも繁殖向きなのかもしれない。

 

8着 アクアミラビリス(ヴィクトワールピサ・社台/藤岡佑)

出走馬中、最少体重の416kg。前走より8kg太って416kg。それで桜花賞13着(勝ち馬との着差1.9秒)からよく巻き返した。気力で走ってる感じがして切ない。この先も無事に。

 

9着 コントラチェック(ディープインパクト・ノーザン/レーン)

中間の調教は、藤沢和厩舎のいつもにも増して「普段の簡単な乗り運動」程度。どう贔屓目に見ても、出走を前提とした調整に思えない。念のため、菜の花賞とフラワーカップでの中間調教をチェックしてみた。どちらも10日か11日前には南Wで6ハロンをちゃんと追い、直前は菜の花が坂路、フラワーカップが南Wでしまいの脚を確認していた。ところがオークス前は、10日前と1週前が南Wの助手乗りで馬なりハロン、5日前に坂路でやはり馬なり 61.0-45.0-29.4-14.4。マシだったのは直前追い切りのみで、

南W 稍 杉原 69.8-53.5-39.7-12.7

藤沢和師は、ペルーサがいなくなってから、鬱か認知症の初期症状かと疑いたくなる采配を続けたことがあった。近2、3年はちょっと復活した様子だったが、ただの症状の波だったのだろうか。気鋭のリーディングトレーナーだった頃を知る身としては、病気などではまったくなく、単に馬の状態がよくなかったか、天の声()と行き違いがあってスネた程度であることを願う。

 

10着 フィリアプーラ(ハービンジャー・ノーザン/丸山)

持ち時計を基準にすると、ブービーでもおかしくなかった。

あきらめない気持ちは母系祖母のラトラヴィアータ譲りのようだ。

 

11着 エールヴォア(ヴィクトワールピサ・白老/松山)

中間は念入りに調教回数を重ね、特に1週前調教では長目を追われ、終い4ハロンで速い時計を計時した。しかし、桜花賞を前走から中2週で臨んだ3歳牝馬には、疲れを十分癒す暇のないこの念入りさが仇になったのではないだろうか。

スピード競馬に対応できる力がなかったと切り捨てるのは簡単だ。ヴィクトワールピサの仔は大体が性根が生真面目。裏を返せば気持ちの余裕を失いやすい。気持ちの余裕は成長を促すから、その余裕がないということは伸びしろを失うことにつながる。しかも、父と異なり、産駒たちは成長曲線が晩成傾向に出やすいようだ。

陣営はエールヴォアの適性を測りかねているようだが、試すより先に、休ませることリラックスさせることを優先してほしい。

 

12着 シゲルピンクダイヤ(ダイワメジャー・天羽/和田)

前2走より前につけたのは、馬がついていってしまったからだろうか。私の観た映像(YouTubeにあがってたやつ)ではわからなかったが、ゲートに入る直前までシゲルピンクダイヤはイレこんでひどく暴れていたらしい。初の長距離輸送に初の左回り、大勢の視線が身に刺さるスタンド前発走と4ハロンの距離延長、厳しいペース、5つの難条件が重なった上にイレコミによる消耗が加わったのだから、この着順着差(2秒4)も致し方ない。問題はこのあと。どれだけ休ませるか、秋はどこの何というレースを目標にするか。きっちり休んだあと関西で開催の1800m以下のレースに出走するなら、緒戦と2戦目は狙い目かもしれない。

 

13着 ウインゼノビア(スクリーンヒーロー・村本/松岡)

2000年前後のウインには好感を持っていた。きっかけが何だったかは忘れた。

スクリーンヒーローは好きである。フレンチデピュティも好きである。

したがって、名前と父・母父名だけでウインゼノビアが気になって仕方がない。

現状では13着は妥当な着順。がんばったほうだ。兄姉がみんな勝ち鞍はダートで挙げているのに、この馬だけ芝。種付け料が高くなってからスクリーンヒーローをつけて産まれた子である。母のゴシップクイーンは社台ファームの生産馬。どの馬をつけてもそこそこ走る仔を出す仔出しの良さは、産まれてから成駒になるまでの飼育環境の良さから来ているのだろう。

ウインゼノビアには、「各種クロスが濃い」以外の特徴がない。たくさんいる凡庸な馬の1頭にも見える。が、走る姿はけっこう素軽い。これまでにレースで乗った騎手は松岡・戸崎・松若。できれば今後もこの3人の中から起用してほしい。使い方もマイネルコスモのような会員配当優先でないほうがありがたい。1ランク上に馬が変わる可能性がないとは言えない。

 

14着 ジョディ―(ダイワメジャー・小浜/武藤)

昔のテレビ馬のようだった。武藤雅はいい騎手だ。2000m以下のレースで雅で固定なら場内を沸かせる馬になりそうだ。但しその前に、馬に4ヶ月以上のリセット期間を置いてやるのが条件だ。

 

15着 ビーチサンバ(クロフネ・ノーザン/福永)

びっくりした。

 

16着 フェアリーポルカ(ルーラーシップ・ノーザン/幸)

年末デビューから、高望みするように上級レースに使われてきた。距離が長い云々の前に馬が疲れていたようだ。

 

17着 メイショウショウブ(ダイワメジャー・三嶋/池添)

メイショウテンゲン等と同じく、メイショウさんの預託繁殖から産まれた仔である。

勝馬だが、牡馬に混じって、デイリー杯2歳Sとニュージーランドトライアルでほとんど着差なしの2着に食い込んだ。距離適性は広くなさそうだが、適距離かつ差し比べにならないレースであれば、世代上位の力を発揮できるようだ。レースごとに池添の父ちゃんの気合いの入り具合も想像できて微笑ましい。

だが、今回の調整は、人間側の気合いが入りすぎていささかマズかった。1週前(CW)と直前追い切り(坂路)、その2回とも強く追ってしまったのである。メイショウショウブの過去のレース前調教を調べると、直前追い切りは軽めにとどめている。ジョッキーのレース後コメントにあるように「初めてのスタンド前発走でイレこんだ」ことも大きいだろうが、その前から馬の体力が削られていたのではないかと思う。

追記:メイショウショウブが直前追い切りでパッパカ駆けたのは、騎乗した池添が追ったからではなく、自分からぐんぐん行っちゃったのだそうだ(ソースは先週木曜発行のスポニチ)。池添親子の気合いが入りすぎたためではないと、ここに訂正させていただきます。自分でカッカしてたのね、ショウブちゃん。 2019.05.23 12:28

 

18着 ノーワン(ハーツクライ・飛野/坂井)

 ノーワン、「他に替えがたい」 。いい名前である。しかし未勝利勝ち後、フィリーズを勝っちゃったから欲が出た。凱旋門賞にも登録しているらしい。いやーそりゃー英仏に適した血統ではあるけどさ…。ルメール、さっさとフランスで厩舎開業しろよ、そうしたら日本人、ノーザン関係者以外もあんたんとこに馬預けてデビューさせるからよ。この馬の馬主だけじゃなく、日本にはそうしたい馬主、たぶんいっぱいいるよ。