2019年 安田記念

ダービーがあった日の夜、職場を途中で抜ける許可をもらって、馬友らの残念会に出席した。実質参加は1時間足らずだったが、馬友の最年長の爺さんが元気に参席していたのが嬉しかった。

爺さんは60代。ステージⅢの癌だ。資材を各地に運ぶ仕事を長年続けた長距離トラック野郎。定年退職して、さあこれから趣味に生きるぞと自転車競技に参加し、ダムを巡ってダムカードを集め、娘さんが学生時代に趣味でやっていたサックスをもらって音楽教室に通い始めた1年後、体調を崩して入院した病院で癌が発覚した。

今どきの癌は日進月歩の治療技術の進展で十年前に比べて死ぬことは少ない。それに、20代や50代で罹患したら体がまだ若いぶん癌の進行や転移が早くて亡くなることが多いが、60代を越えると、若い世代より「癌に罹患してからそれが原因で亡くなるまでの期間」は長くなる。

とはいえ、やはり心配は心配だった。日本が景気のいいころに現役時代のほとんどを過ごせたのだから恵まれた世代ではあるが、爺さんが9人きょうだい(!)の末っ子で、中学を卒業してからずっと働いてきたのは仲間の皆が知るところ。しかもこの人、文章を書いてもしゃべっても面白い。正直、体になんらかの障害があって普通学校に進学できなかったり登校拒否等の理由以外の中卒で、‘自分を落として皆を笑わす話ができて、書く文も面白い人’ と出会ったのはこの爺さんが初めて。ある種、こういう年のとりかたをしたいと思わせる人だ。

爺さん、医者に病変箇所の切除手術を奨められてもそれを断り、放射線治療と服薬だけで粘っている。酒やタバコは当然禁止だが、ふと見ると飲んでたり吸ってたりする(量や本数は減っている)。爺さんを見てると、終末医療の在り方や、当事者になった時の過ぎ越し方を考えさせられる。

 

安田記念。久々にルメールが戻ってきた最初のG1。

ルメールの騎乗停止前と直後、爺さんは「ルメールがいると競馬がおもろない。おらんようなってちょうどいい」と言っていたが、オークスが終わると「ルメールおらんと軸が決まらん、早よ戻ってこいやアホルメール、なんで騎乗停止になんかなりよったんじゃ」に変わっていた(笑)。

そのルメールアーモンドアイは7枠14番。両サイドには川田ダノンプレミアムとMデムペルシアンナイトがいる。昼からは、適距離に戻った8番ステルヴィオが、レーン騎乗もあってどんどん人気になっていくだろう。アーモンドアイとダノン、ステルヴィオ、この3頭で決まってしまうこともありうる。

しかしそこは安田記念。何が来てもおかしくない。とりあえず、1枠の2頭と、血統上気になる5番インディチャンプ外国産馬の2頭、7番モズアスコット10番フィアーノロマーノがどこまでやれるか、結果を楽しみにしたい。