【感想】 2019年 チャンピオンズカップ

1着 クリソベリル(川田)

川田のレース後コメント通り、枠の並びが良く、インティにつかず離れず沿うことで勝利が6割は保証されたようなものだった。あとはゴールドドリームが外から伸びてきて横に並んだ瞬間にMax追いするだけ。ゴールまで150mの攻防は川田的に想定内だったのではないだろうか。

クリソベリルはこのあと休養に入るが、東京大賞典フェブラリーSに出走しないことは関係者から明言されている。例のサウジアラビアの最高賞金レースに出るかどうかは未定も、海外遠征視野はほぼ確定的だ。

 

2着 ゴールドドリームルメール

「使える脚の長い馬が好き」という私の個人的な好みもあるが、2着に負けたものの、このレースではゴールドドリームが一番強いレースをした。あの直線の伸びで負けてしまったのがほんともったいない。今が6歳で1か月後には7歳になってしまうのも残念だ。ルヴァンスレーヴの復帰見通しが立たないダート戦線、ゴールドドリームにはできれば引退まで衰え少ない馬でいてほしい。

※ルヴァンスレーヴの疾病は、仮に復帰できたとしてもこれまでのようなレースができる保証がない。クリソベリルはいろいろな意味でラッキーな馬だと思う。

 

3着 インティ(武)

「逃げ馬が走る気をなくしたら復活は難しい」――インティの不安点についてそう指摘しているコラムを見て心配だったが、ひと安心。逃げで良績を上げる馬の多くは神経質で、インティもその1頭(私見)。武に手が戻り、いつもの中央、自分のペースで走れた等、条件が好転した。

1000m通過は1.00.6。

レースラップは

12.8ー11.3ー12.5ー12.1ー12.1ー12.0ー12.0ー11.6ー12.1

ハロン目から美しすぎる時計である。

テーオーエナジー川須が競りかけるように見えたが、それも一瞬、川須は行きたがる馬を抑えて二番手に控えた。これがもし控えなければどうだったか。インティの課題はまだ残されている。

 

4着 チュウワウィザード(福永)

福永は昨年の夏以来の騎乗(7月/3着)。レース後の「勝ち馬のポジションでレースをしたかったのですが、その位置が取れませんでした。今日の勝負のポイントはそこですね」のコメントがすべて(他馬を弾き飛ばしておいて他人事風なのはさておく)。

チュウワウィザード自体は決して弱い馬じゃない。しかし福永はこの馬の8勝中6勝を請け負った川田とは手が違いすぎたし、前集団がインティマークで馬群が固まっていたのもアンラッキー。

これまでの成績を見るとウィザードは内枠馬番で閉じ込められたら最後、出足や道中の反応が素早いほうではないようだ。スタートから自信を持って馬に指示を出せる騎手、たとえばマーフィーが乗っていたら……と思うが、馬主の中西さんがなるだけ日本人騎手にこだわりたい方なら、藤岡康太和田竜二はどうだろうか。

「地力で結果的に先頭ゴールはいいけれど、自ら進んで他馬に勝とうとは思わない」は、父キンカメに似た性分か。性格としては可愛いが、ファンのやきもきは続きそうだ。

 

5着 キングズガード(秋山)

中央競馬G1参戦4回目にして初の掲示板、おめでとう、である。私がインティの次に日高馬の中で好走を期待したのがこの馬とヴェンジェンス。正確に言うと、騎手の秋山と幸に期待した。

その理由は前走のみやこSにある。前3頭の鍔ぜりあいをはるか後方遠目から眺めていたこの2頭がワンツーできたのは、半分は偶然ではない。ベテラン日本人騎手の “機を見るに敏なちゃっかり戦略” がハマったのである。ヴェンジェンスの鞍上、幸は自馬に余力があるのをわかっているから3コーナー手前から外をまくりあげた。キングズガード秋山はその進路をなぞるようにぴったりついてきた。2頭は4コーナーで内がごちゃついているのを尻目に楽々外を走り抜け、直線ではヴェンジェンス先頭、エンジンのかかりが遅いキングズガードはゴール前30mもない位置でウェスタールンドを差し切ってゴール。

秋山は改装前から中京で巧かった騎手だし、幸はダートで信用が置ける騎手。二人とも、みやこSから「インティが出る以上、騎手たちの関心は前に行き、後ろへの注意は手薄になる」と踏んでの臨戦だったはずだ。特にキングズガードは久々の重賞2着でホメられて、馬的にも気分が良かったろう。

哺乳類は基本的に人間の幼児と同じ。気分がいい時に頑張らせる千載一遇のチャンスだったわけで、左回りが苦手な馬のための秋山による二度目の “直線まで死んだふり作戦” は見事功を奏した。レース後コメントを見る限り、秋山はもっと上の着順を目指していた(「やはり左に行きますね。最後は来ていますし頑張っているのですが......」)ようだが、力は出し切ったのではないだろうか。

 

6着 オメガパフュームデットーリ) 

 地方の砂のほうが合っているようだ。

 

7着 ヴェンジェンス(幸)

正直、キングズガードよりこっちのほうが上の着順になると思ってた。

この馬を選んだ理由はみやこS以外に2つある。

ヴェンジェンスと幸の軌跡を見ると、幸がコースとメンツ、馬場状態を勘案してどうにかこの馬を勝たそうと工夫しているのがわかる。その傾向は昨秋から顕著で、各レースごとに異なる位置取りでヴェンジェンスを走らせ、3着内に持ってきている。調べてみると、ヴェンジェンスはデビュー時からダートの新星として期待された馬らしい。それが2歳の暮れ、デビュー3戦目の寒椿賞後に故障発症、1年半の治療休養を余儀なくされた。1年半のあいだ、陣営も幸も、この馬の復活復調を待ち望んでいたのは想像に難くない。昨秋、落馬負傷して外部から競馬を観るしかなかった幸が最も気にしたのはこの馬の状態とレースだったのではないだろうか。復帰した幸は、なお一層この馬のランクアップに腐心したように思える。

また、栗東坂路での最終追い切りも悪くなかった(幸 52.7-37.8-24.2-12.2 馬なり)。

このレースでは直線で内外に他馬が並び、前を行くG1馬たちは止まらず、残念な結果になった。しかし初G1でここまでやれた。層の分厚いダート中距離戦線だが、ハイペースの短距離ダートでも好勝負を重ねてきた馬である。体の無事は当然のこととして、左回りに慣れていけばチャンスが無いとは言えない。

救いはレース後の幸の前向きコメント。ちょっと感動したので載せておく。

よく走っています。最後も伸びてくれました。手前を替え切れないところがありましたから、スムーズならもう少し結果は違っていたかもしれません。馬の具合も良かったですが、この相手でも十分やれる力を見せたと思います

 

8着 タイムフライヤー(マーフィー)

1枠1番が仇になった。道中は淀みないペース、4コーナーから直線にかけては馬群が密集、動くことままならず。休養明け4戦目だったことや、急遽?調教日を増やしたのも妨げになった感。

 

9着 ウェスタールンド(スミヨン)

鞍上の腰痛が全て。というか、この馬は藤岡祐介で観たかった。

 

10着 ロンドンタウン(岩田康)

馬柱見て右馬っぽいと感じたがやっぱり右馬だった。そもそも中京ダート(0.0.0.4)。中間~最終とも調教はとても良かっただけに、右回りのダートG1がないのが調子を上げた右馬には不幸だ。余計な芝G1はつくるくせにダート軽視のJRA、まともな了見を期待するのが間違ってるのか。

サウジの主催者よ、サウジカップは右回りにしてくれ。そしたらノーザンがJRAに「右回りG1をつくれ」と圧力かけて北海道と阪神にダートG1つくってくれるから。

 

11着以下は割愛。

ボディアタックを受けたテーオーエナジーの心身に問題が残らないことを祈る。