JRA競走馬の飼料から禁止薬物 156頭が競走除外へ
15日の朝に知ったのだけれど、ヤフーがいつまでも記事をあげてるから、競馬をしない一般人にひどい誤解が広まりだしてる。16日の新聞見出しでまたそういう層が増えるかと思うと気分が萎える。
便乗して騒ぎを拡大させたい連中が「想像と事実をまぜこぜにして」ネットで叫び出してるもんで、ミスリードにひきずられる怖さも感じる。
そこで、自分なりに現時点で事実と思われることをまとめ、感想なども付記してみる。
<明らかになっていること>
検出された「禁止薬物」はテオブロミン。競走馬理化学研究所の分析で、『グリーンカル』というサプリメントに含まれていることが確認された。『グリーンカル』は、競走馬の普段の餌に添加する栄養剤のようなものである。
テオブロミンはココアやチョコレートにも含まれている成分で、カフェイン同様、覚せい作用や気管支拡張作用を持つ。ごくごく微量ならともかく、生体に影響が出る(興奮作用で疲れを感じにくくなる、呼吸がしやすくなり、運動で息があがりにくくなる等)ほど摂取すると尿検査でひっかかる。
●なのでその飼料を使っている厩舎の出走全馬が公正競馬の観点から除外対象になり、その数が今週土日合計で156頭。
●『グリーンカル』は競走馬用サプリとしては一般的で、現在は他のものに替えているが、かつては使用していた厩舎がある(松田国英厩舎など)。
●『グリーンカル』の外袋には「材料に禁止薬物は入っていない」ことが明記されており、トレセン内売店のJRAファシリティーズ(JRA関連会社)でも売っている。
●『グリーンカル』利用厩舎は、『グリーンカル』をトレセン内売店のJRAファシリティーズ(JRA関連会社)で買っていた。
●『グリーンカル』の販売元は三菱商事の連結子会社である日本農産工業株式会社、製造元はニッチク薬品工業株式会社である。
●JRAのトレセン厩舎で使用される飼料やサプリについては、販売前に競走馬理化学研究所が内容分析を行い、「規制薬物」や「禁止薬物」が検出された場合、JRAはその取扱い(販売・使用)を認めていない。
●『グリーンカル』を使用していたため、今回所属馬が競走除外になった厩舎は以下の通り(*は函館組のみ競走除外)
栗東…安達、飯田雄*、池添兼、大根田、大橋、昆、佐々木、鮫島、笹田、須貝、鈴木孝、高野、西橋、西園、西浦、服部、藤沢則、南井、宮、安田隆*、山内、湯窪
<真偽未確認だけど15日朝の時点で伝わってきたこと>
●件のサプリは、理化学研究所の検査を通過する前にトレセンの売店で売られていた。
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これについてはJRA裁決委員が取材に答えた記事がある。
そして15日夜、販売元の日本農産工業株式会社は、同社HPにて「原材料にテオブロミンは使用していない」「現時点では原因を特定できておらず、原因究明のため調査中」である旨を発表(PDFファイル)。
https://www.nosan.co.jp/information/pdf/00000107_1.pdf
解せぬ…
『グリーンカル』はけっこう以前からJRAトレセン厩舎で使用されていたサプリとのことだが、理化学研究所で検査を受けたのは今回が初めてだったのか?
『グリーンカル』が以前に理化学研究所の検査に合格していたとして、今回検査対象になったのはロット変更か仕様変更があったからなのか?
それならそれで、検査中のサプリが、検査を済ませて「流通可、使用可」となる前にトレセン内で売られていたのは何故なのか。
販売元とトレセンに納入する業者は同じなのか違うのか。同じとすれば販売元の責任は免れえないし、違うとすれば、納入業者に未検査のサプリを納入させたのは販売元なのかトレセンなのか。
納入されるトレセン側(JRAファシリティーズ)は、サプリや飼料が検査済みか否かチェックしないでただ受け取って売るだけなのか? JRAファシリティーズに理化学研究所と横の連絡をとりあう部署はないのか? トレセン内にサプリや飼料の流通を管理監視する、JRAファシリティーズからも独立した権限を持つJRA職員はいないのか?
日本農産工業(株)がリリースした文書(記事)によると、日本農産工業(株)に競走馬理化学研究所から「おたくんとこのサプリから禁止薬物が検出されました」と連絡があったのは14日午後。社会常識・ビジネスの常識として、JRAや農林水産省のJRAを監視する部署に、同じ連絡がほとんど同時に入ったものと考えられるが、そのとき、JRAはどう動いたか。農林水産省のJRAを監視する部署はどう動いたか。緊急性を理解していたならトレセンと日本農産工業(株)またはニッチクの倉庫に急行し、両方の場所で情報と現物サンプルの収集につとめ、新たに入手したサンプルを理化学研究所に検査依頼するはず。それをしていたかどうか。
禁止薬物が混ざったサプリを使用していたために、今回所属馬が競走除外になった厩舎は、須貝厩舎と安田隆厩舎を除き、リーディングランキングとはあまり縁のなさそうなところばかりである。ランキング上位でなければ大手牧場生産馬や大手牧場系馬主と縁が薄い。縁が薄いということは、入ってくるお金が少なく、自転車操業のような経営を余儀なくされている厩舎もあるということだ。
なので、
『グリーンカル』は、大手馬主ご用達のリーディング上位常連厩舎が常用するサプリと違って安いんだろうなあ
と思った。
そしたらなんか
泣けてきた。
※上記記事を投稿したのは16日午前2時台。7時間後の午前9時台に以下を追記。
その後、「使用実績のあったグリーンカルは、以前は陽性が確認されず、昨年12月出荷分から禁止薬物が含まれていた」と報道された。
ということは、「今年の初めからテオブロミンの影響を受けたままレースに出走した馬がいた。それも大量」の可能性はまったく否定できない。
最近の事例では、安田記念のロジクライ(須貝厩舎)の “スタート直後にゲート横切り事件” 、あれはテオブロミン成分の影響を受けて起きたのかもしれない。
競走馬理化学研究所がグリーンカルの成分を検査していたのは、4月に販売元・日本農産工業が御自ら検査を申請したかららしい。でも、昨年末から流通してたのに4ヶ月経ってから検査申請したのは何故?
そもそもグリーンカルへのデオブロミン混入が、単に混入なのか、それとも勝手に仕様変更されて混ぜ混ぜされたのかがわからない。
昨日の朝の段階で、私は「他にも理化学研究所の検査結果を待たずに、あるいは理化学研究所を通さずに使われている飼料・サプリがあるのではないか。今回のグリーンカル・テオブロミン混入発覚はそれらに対する警告的意味合いがあるのではないか」と思ったのだけども(なんせグリーンカルを使ってる厩舎はエリート厩舎じゃないところがほとんどだから)、これもまた成り行きを見なければわからない。
使ってた厩舎だけを処罰・制裁対象とするのはやめてよね、JRA。
もしかしたら、JRAファシリティーズにも日本農産工業にもニッチクにも農水省やJRAの退職組が天下りしてるかもしれん。でも、だからそこに矛先を向けられない、なんてやめてよね、JRA。
2012年にピンクブーケ事件があったのに、
その後も納品物に対するチェックが機能しなかったのが
問題の本質。
そこをちゃんとしないなら
それこそ公正競馬じゃないからね。
騎手が何で頭を下げなきゃならんのよ。
この問題で騎手に頭下げさせるのは違うよ、競馬マスコミ。
騎手が自ら頭下げたら、「あんたのせいじゃないだろ」ぐらい言ってくれ。
連帯責任てやつは、問題の本質をうやむやにして、上位組織を守るためにある。
高校出てるならそれぐらい理解してくれ。
ちな、この問題についてすっきり整理してる意見記事があった。
ネット競馬のコラムはあんまり見たことないけど、これ ↓ はすごく腑に落ちた。