【感想】 2018 朝日杯フューチュリティステークス

Flashの不具合でJRAのレース映像とパトロールビデオが観られない。TV録画はうっかり忘れた。というわけで、youtubeにあげられたレース映像のみを観ての感想になる。

いつもの感想は掲示板内の馬だけで力尽きてしまうので、今回は趣を変えて、ビリになった馬から書いていくことにする。例年、朝日杯出走馬の大半が、その後、勝ち鞍の上乗せに苦労して、多くはひとつも増やせず消えていく。私も何年に何が出ていたかすぐに忘れる。二度と振り返らないかもしれないが、備忘録のつもりで。

 

15着 ニホンピロヘンソン(浜中)

ルーラーシップ×コマンダーインチーフ×ブレイヴェストローマン×インファチュエイション

栗東・安達厩舎。馬主は小林百太郎氏。生産牧場は友田牧場。

調教は良かった。馬柱を見ると、開幕4日め阪神新馬芝1400のタイムがいい。マイルは未経験だが、ゴール前の急坂を経験しているのは心強い。鞍上は浜中。心配は、外枠と2ヶ月の休み明け緒戦でG1はどうかという点だった。

レースぶりは「あちゃー(~_~;)」。スタートでは騎手の上体が立ち上がるロス。そこから3コーナーの入り口までは途中で後方2番手の位置から前へ前へと進出し、4コーナーを回って直線に向かったときには騎手に合図のステッキを一発もらうも反応なし。

結果は勝ち馬から2秒7遅れのビリ。競走実績からするとありえないので、故障したかと思った。あのレースぶりで直線ビュンと反応して馬券内に来たなら「父ルーラーシップのいいとこも悪いとこも兼ね備えた馬」になったのだが。

ジョッキーコメントは「レース前に入れこんで終わってました」。故障でないなら幸い。9月デビューの3か月後G1。人間にもいる。地区大会で勝ち上がったが、ひとつ上の都道府県大会では空気に呑まれてアタマ真っ白。

浜中がヘンソンの状態を確かめて、あえて後々のために直線でステッキ乱打&無茶追いをしなかったのなら浜中に感謝したい。朝日杯ビリ馬は、ビリ以外の二ケタ着順馬より案外生き残っている。阪神移行後を例にとると、2014年度のビリ馬は2勝を積み上げて1600万下馬になり(現在は抹消)、2015年度馬はOP入り(現在休養中)、2016年度馬は3歳初夏で抹消(使い倒しブルベア馬)、2017年度馬はもともと地方馬(現在は門別から岩手転籍)。

ヘンソンは、出走馬中、血統にサンデーサイレンスが入っていない3頭のうちの1頭である。血統的にマイルは守備範囲、それよりもっと距離を伸ばしてもいいくらいだ。パニックは癖になるので(脳にそういう回路ができてしまう)日常的にマッサージや曳き運動で落ち着かせるのはもちろん、馬場運動はコースでゆったり、調教も坂路ではなくウッドで長目をじっくり、クラシックだNHKマイルだなどと焦ることなく仕切り直しをしてもらえたら幸いである。

ここからは少し余談を。

競馬を、春秋たけなわの芝G1しかやらなくなって久しかった。中間には競馬どころじゃなかった数年もある。だから、今年の朝日杯の出馬表にニホンピロと小林百太郎さんの名前を見つけて嬉しかった。懐かしさもあったが、失礼ながら「ご存命でいらした」と。

小林百太郎さんのお人柄については下記記事に詳しい。記事の最後のほうにはニホンピロヘンソンの生産牧場、友田牧場の名前もある。

騎手とオーナー | Compassion コラム

小林百太郎さんが、 小岩井農場の基礎輸入牝馬の血を引く繁殖を買われたのは、約50年前。ヘンソンはその曾孫にあたる。「ニホンピロヘンソン 牝系図」で検索して、そのページを見ていただきたい。ヘンソンのひいおばあちゃんニホンピロアスターから出た子孫はすべて小林さんが所有しておられる。こんな馬主、滅多にいない。

 

14着 ソルトイブキ(四位)

ベルシャザール×フジキセキ×トニービン×ノーザンテースト

栗東・木原厩舎。馬主は杉浦敏夫氏。生産牧場は野坂牧場。

調教はしまい強めで可もなく不可もなく。阪神は未経験、3戦目の京都で初勝利を挙げ、朝日杯に参戦。よくいるタイプだ。ただ、この馬が勝ち上がりに3戦も要したのは運がなかっただけのようにも感じられた。しかし足りないのは運ではなく、ビビりを補うだけの気の強さだった。

ジョッキーのレース後コメント「他馬が寄ってきて、経験が少ない分、馬が怖がって急ブレーキをかける形になってしまいました。今日は何もさせてもらえませんでした。500万下から出直します」。

ヒラソールに寄られて気が萎えてしまったらしい。血統5代内にサンデーサイレンスの3×3のクロス(血量25%!)を持っているのに、ビビりというのは面白い。サンデーサイレンスの獰猛性は、“パーソナルスペースの絶対確保”の使命感情からくるんじゃないかと仮説を立てたくなるほどに。

なんにせよ、ビビりも個性である。すでに1勝していることと、騎手コメントの「500万下から出直します」が救いだ。出し抜け狙いでレースに慣れていくうち、オスが目覚めてビビりの克服につながればいい。

 

13着 ケイデンスコール(Cデムーロ

ロードカナロア×ハーツクライ×アレミロード×ディクタス

栗東安田隆厩舎。馬主はサンデーレーシング。生産牧場はノーザンファーム

勝ち馬から2秒1差。初戦の中京マイルは落としたが、新潟マイルで二連勝。右回りは未経験だが、連勝に加えてこの生産牧場、馬主、血統で、突発的な病気発症や故障じゃないのにこの着順着差はありえない。ありえないが、平坦新潟にしか勝ち鞍のない2歳馬ならありえる。結果論だが、たとえ外厩で坂路を登らせ、右回りの模擬戦を済ませていても、レースに出ることが精いっぱいのこの時期は、実戦が一番身につくということだろう。

それ以外にも負けの要因はある。あえて言うなら、騎手デムーロ弟と厩舎の慢心だ。帰厩してからの調教は、馬がまだ幼いことを忘れていたのではないか。次に本戦での位置取り。デムーロ弟は同じ阪神マイルだから1週前の阪神JFの乗り方をすればいいと決めてかかっていたのではないか。

これで3着内に入るようなら、ケイデンスコールは皐月またはNHKマイル~ダービーの馬券候補になってたはずだが、レース前と後とでは評価が一転、馬が弱いという声が強い。馬のせいじゃない。人間の注意深さが足りなかった。

 

12着 ドゴール(津村)

サクラプレジデント×ブラックタイアフェア―× Wavering Monarch × His Majesty

美浦・黒岩厩舎。馬主はカナヤマ・ホールディングス。生産牧場は豊洋牧場。

タイムはともかく、調教量は豊富だった。前走でグランアレグリアの2着になったということで穴人気していた。

二桁着順は初の長距離輸送と右回り未経験がすべて。位置取りを前にとったところで着順を2つ3つ上げていたかどうか(馬主的には一桁着順と二桁着順では大違いだろうが、馬主になる以上は二桁敗退もあると織り込み済みだろう)。

ドゴールは母系が良い。日高の誰が最初に、三代母のバトルクリークガールの娘たちに目をつけたか知らないが、功労牝系と言っていい。

 

11着 コパノマーティン(坂井)

スクリーンヒーロー×ディラントーマス×ゴーンウェスト×ポリッシュプレセデント

栗東・村山厩舎。馬主は小林祥晃氏。生産牧場は谷岡牧場。

英語で打つのが面倒なのでカタカナにした。

コパノマーティンの5代内クロスはダンチヒの4×4×5(血量15.63%)にノーザンダンサー5×5×5(血量9.38%)、ヘイルトゥリーズン5×5(6.25%)、ヒズマジェスティ5×5(6.25%)。断言する。これは血統ヲタクが考えた配合だ

であれば、ダンチヒヒズマジェスティの血脈は、お薬や動物性飼料でホルモンどぴゃーにしなけりゃ本来が晩成傾向なのを知っておろう。ならば休ませよう。相手は工業製品ではないのだから、イメージを持って育てる気持ちを持とう。芝とダートのまぜこぜ7戦目で馬のメンタルが壊れかけている。

5戦目にようやくダートで勝ち上がって、次のダート500万下で大敗したのに、1か月後には芝G1に出走させる意味はなんだろう? 今回、人気より着順が上になったのは、たまたまだ。「せっかく走る配合考えたのに、思ってたのと違うから早めに潰す」というのなら「そういう考えもあるよね」だが、それは風水が奨励する思考なんだろうか(断捨離的な?)。

 

10着 マイネルサーパス(丹内)

アイルハヴアナザー×タマモクロス×ナイスダンサー×アローエクスプレス

美浦・高木厩舎。馬主はサラブレッドクラブ・ラフィアン。生産牧場はビッグレッドファーム

東京未勝利1800m戦、福島500万下特別1800m戦を連勝して臨戦。調教は、時計的には目立たないが量が豊富。

スポーツ紙で、レース前の高木調教師のコメント、「追い詰めると考えてしまいそうなタイプなので、イライラさせないように気をつけながら本数を重ねた」を読んで、感動した。競走馬を持てるなら、一頭一頭、馬の個性・メンタルまで考えてくれる調教師に託したい。社台系馬をほとんど預かったことがなく、成績的にもパッとしない高木厩舎だけど、そういう姿勢でいてくれてるとは知らなかった。

しかし、結果知ってガックリ。「やっぱりタンナイか」。初の関西遠征が影響した可能性はあるけれど、この大敗は、厩舎、調教師、馬のせいじゃない。

ジョッキーのコメント。

「展開が厳しかったです。立て直して巻き返しを狙います」。

かましわ、お前が言うな と、ちょっと思った。2歳中距離の大一番でこの騎手を指名したのは誰なんだろうか。そりゃ前走で勝たせてるから継続騎乗もアリだけど、結果的には新馬から3走騎乗していた先行バカの柴田大知のほうがなんぼかマシだったかもしれん。同じ柴田でも、ヨシトミ先生なら悪くても掲示板下に持ってきてただろうけど、まぁ乗らないだろう(形式馬主の後ろにいる人がウルサすぎる)。

マイネルサーパスの扱いにくさ、神経質さは母系からきているようだ。しかし癇癪着火の速さは「おだて弱さ」と表裏一体。たいてい自己中で寂しがり屋だ。サラブレッドは体がでかい上に筋肉お化けで、怒ると攻撃が殺傷能力に直結する。それだけに人間の扱いと同列にしにくいが、「上客だけど気難しい客」接客のコツにヒントがありそうだ。

 

9着 イッツクール(松田)

アルデバランⅡ×エンパイアメーカー×アグネスタキオン×ガルチ

栗東・武英厩舎。馬主は久木田隆氏。生産牧場は日本中央競馬会日高育成牧場。

調教は坂路でもCWでもしまいのみ。血統的にはダート馬だが、勝ち鞍は2勝とも芝。初勝利は札幌1200、2勝目は阪神1400で挙げている。1400の勝ちタイムは2歳9月としては悪くない。前走で園田・兵庫ジュニアグランプリ(ダート1400 6着)を使ったのは、「間隔を詰めて使ったほうがいいから」(調教師談)らしい。

結果的に9着は、人馬とも健闘だった。走りがきれいなので、この先も芝の短距離でそこそこやれそうだ。

それにしても日本中央競馬会ミスプロクロス2×5×5(血量31.25%)の馬つくるの怖くなかったか?(血量はわずかだが、8代内にあるバックパサーのクロスがいい方向に働いてくれたのかもしれない)

 

8着 ヒラソール(岩田)

マツリダゴッホ×ボストンハーバー×ミルジョージ×キタノカチドキ

栗東・加用厩舎。馬主は阿部榮乃進氏。生産者は阿部栄乃進。

JRAの‘今日の出来事’によると、スタート直後、内側に斜行(被害馬:ソルト、マイネル、ドゴール)したようだ。斜行がどの程度のものか確認できないので迂闊なことは言えないが、徒競走で出鼻をくじかれるのは、キャリアが少なく距離が短ければ短いほど影響が大きい。

ヒラソールの前走は京都1200未勝利戦。血統を見、馬柱を見て即消しした1頭だが、8着はさすが岩田といったところか。

 

7着 アスターペガサス(福永)

ジャイアンツコーズウェイ×トリッピ×ゴールドフェヴァー×カポーティ

栗東・中竹厩舎。馬主は加藤久枝氏。生産牧場は Stonestreet Thoroughbred Holdings。

調教は悪くなかった。しかしこれも、血統を見、馬柱を見て即消しした1頭。

結果が出た後、「内枠の福永は前づまりしてダメなこともあるが、マイルだとやっぱ怖いなぁ」……と思ったが、映像を二度三度見ると直線でエライことになっていた。手綱にムチが絡まなかったら、掲示板に届いていた可能性もあっただろうか。

勝ち馬に1,5秒離されての入線だけれど、前半は首を振りっぱなし、後半はアクシデント、それで掲示板下なのだから隠れたスタミナ馬だ。一介のスプリンターで終わらせるには惜しい。中距離戦で息いれることを覚えつつ、来年か再来年の暮れの有馬に出走登録しないかしら。

 

6着 エメラルファイトビュイック

クロフネ×スペシャルウィーク×サマースコール×テンタム

美浦・相沢厩舎。馬主は高橋勉氏。生産牧場は金成吉田牧場

2週連続、調教にはビュイックが騎乗。外国人騎手にしては慎重かつ軽め。エメラルファイトの競走成績の1勝は6月東京芝マイル新馬戦のもので、9月から再始動、札幌と東京、いずれも芝1800mで4着3着。

調教判断は難しいが、競走実績は文句なし。父はクロフネで、今回乗るビュイックは、今年、ドバイシーマクラシック、クィーンエリザベスⅡ世カップ英ダービーで騎乗馬を勝たせ、日本ではマイルチャンピオンシップステルヴィオを勝たせている騎手である。

問題は初の関西遠征と大外枠だったが、ソルトイブキと前後してしんがり追走になりながら、上がり33.5で6着は立派。距離適性がどこにあるか、芝がいいかダートがいいかはわかりかねるが、ポテンシャルの高さを感じた。

 

5着 ディープダイバー(川田)

ブラックタイド×レイヴンズパス×サドラーズウェルズ×アイリッシュリヴァー

栗東・大久保龍厩舎。馬主はノースヒルズ。生産牧場は平山牧場。

調教は○、4戦目の阪神芝1400(重)で初勝利だが、その時の勝ち時計がいい。

初勝利までも2着2着3着と惜敗で、初勝利後の京都2戦(いずれも芝1400)も惜敗の連続2着。典型的な「相手なり」。こういうタイプは、使いづめ(疲労の蓄積)にさえ気をつければ、来夏、古馬との混合戦でも相手なりに善戦してくれる。格上挑戦で穴をあけるのも同じタイプだ。

上位馬は確かに強かったが、今回の5着は4コーナーで内にモタれたぶんだろう。このモタレで最内にいたクリノガウディ―がブレーキをかける不利。川田はダイバーがモタれる原因になる行動(左鞭を使う等)をとっておらず、明らかに馬の癖なのだが、まっすぐ走らせる義務を怠ったとして過怠金3万円の制裁を受けている。川田はダイバーの5戦目からの騎乗なので、癖がそれまでについていたとしたら気の毒だ。

相手なり+モタレ癖は、モタレ癖が治らない限り次の勝ちまでが遠くなる。厩舎はいろいろ工夫しているようなので、春頃にはモタレがマシになることを願う。

 

4着 ファンタジスト(武)

ロードカナロア×ディープインパクト×ディンヒル×ロベルト

栗東・梅田厩舎。馬主は廣﨑利洋。生産牧場は Shall Farm。

1週前の坂路調教の時計が破格すぎてスポーツ紙の記事になっていた。森厩舎かと思ったら梅田厩舎だった。梅田厩舎は2011年頃から飛び石確変に入ったようだ。

競走成績は中京と小倉の芝1200で2勝、東京芝1400(G2)で1勝。

3戦3勝の無敗馬はこの馬とアドマイヤマーズの2頭だけ。

一方で、鳴り物入りで参戦してきた牝馬グランアレグリアは、前日夜8時半の時点で単勝1.5倍、複勝1.0倍の評価を受けていた(最終的には単勝1.5倍、複勝1.1倍)。

単はどれにするか、連系馬券で黒字にするには何をどう買うか、工夫が要る。

ファンタジストの扱いは「競馬にドラマを作るべく、ここは忖度が働く」見方と「ここでタケユタカが勝てるくらいなら、タケユタカはとっくに朝日杯を獲っている」見方のふたつが可能だった。

結果、馬券にはならなかったが、これに判断力と経験とアラフィフより若い筋力を兼ね備えた騎手が乗っていたらどうだったか。馬の能力は相当高い。

 

3着 グランアレグリアルメール

ディープインパクト×タピット×マーリン×フォーチュネイトプロスペクト

美浦・藤沢和厩舎。馬主はサンデーレーシング。生産牧場はノーザンファーム

グランアレグリア母タピッツフライは4歳時にアメリカの芝マイルG1を2勝。その後、1億5千万円でノーザンの勝己さんに落札されて日本に来た。しかし好事魔多し、不受胎が2年続き、やっと初仔(当馬)と第二仔(牡)に恵まれたと思ったら、今年の3月初め、突然逝去(おそらくは事故?)。ノーザンが今年、リスクやムダを最大限に回避して国内G1獲りに躍起になった事情の一端がうかがわれる。気持ちはわかる。ノーザンの商売の仕方の「結果的にいいとこ」もわかるだけにわかる。

鞍上ルメールは位置取りが巧かった。逃げるイッツクールがいつ垂れてもいいように、ポジションをずっとイッツクールの斜め後ろにとって二番手。しかしそのすぐ後ろで、ミルコ(デムーロ兄)がルメールをがっちりロックオンしていた。

ミルコは牝馬にも容赦しなかった。4コーナーの終り口で最接近、直線コースに向かってルメールが馬に一瞬息をいれさせたところで強襲、並びかけると同時に幅寄せ(故意かどうかは知らん)、最内で粘るイッツクールともども内に押し込んだ。この部分、マーズとアレグリアアレグリアとイッツクールの馬体が接触してこすれたように見えるが、パトロールビデオではないので正確なところはわからない。

これにより、イッツクールは抵抗の気力を失って脱落。アレグリアは盛り返すと見えたが、トップスピードに乗りきれないままクリノガウディ―にも抜かれて3着敗退。

牡馬より斤量が1kg軽く、内枠の利もあったとはいえ、初の長距離輸送に「実戦では初」の右回り。そこに仕掛けられたドッグファイト(応戦はしなかった。だってホースだもん)。それでよく3着を死守したと思う。ノーザン・サンデーR・藤沢和のお嬢さま、動転しなかったはずはない。アレグリアは馬たらしルメールをよっぽど信頼しているのだろう。

アレグリアの今後は次走でわかる。記憶に残るあのシーンで呼び起こされるものが恐怖か怒りか。怒りなら彼女はもっと強くなれる。

 

2着 クリノガウディー(藤岡佑)

スクリーンヒーロー×ディアブロ×メジロライアン×ノーザンディクテイター

栗東・藤沢則厩舎。馬主は栗本博晴氏。生産牧場は三輪牧場。

1週前も良かったが、当週追い切りはもっと良かった。競走成績は京都芝1800で勝利、二戦目(前走)に東京スポーツ杯2歳Sに出走して7着。東スポ杯の着順だけ見ると買えないが、勝ち馬ニシノデイジーとの着差は0.5。追い切りの良さも加味すれば、ヒモとしては買える。しかし2着に食い込めるとまでは思わなかった。

鞍上の藤岡佑はチャンピオンズCでウェスタールンドに最内走りの面白いレースをさせたが、朝日杯でも1枠1番を生かして、ガウディ―に出し抜けと言おうか漁夫の利と言おうか、面白いレースをさせた。デムーロルメールを標的にして脚を鈍らせたが、それをすぐ後ろで目撃した藤岡佑は進路を外にとって猛然と追い込みを開始した。映像を観返すと、外国人二人の鞘当て(さやあて)を尻目にゴールめがける藤岡ガウディ―、といった風に見えて可笑しい。

アドマイヤマーズが強すぎたために2馬身差の2着に終わってしまったが、藤岡佑の瞬時の判断力と柔軟な思考、および4コーナーで不利をこうむりながら、それをものともしなかったガウディーの勝負根性を賞賛したい。藤岡佑騎手は、競馬において骨格にハンディのある日本人騎手が、西洋系の血を持った騎手に伍するために必要なものが何かを示唆してくれている。

がんばったクリノガウディーだが、懸念をひとつ。レースを重ねるたびに気が荒く、神経質になってはいないか。それを競走馬として強くなった証拠と楽観視していると、いつのまにか「気」と「体」が空回りして成果が出なくなっていた、ということがありうる。こまめなリラックスタイムが必要な馬だと思う。

 

1着 アドマイヤマーズ(Mデムーロ

ダイワメジャー×メディシアン×シングスピール×リナミックス

栗東・友道厩舎。馬主は近藤利一。生産牧場はノーザンファーム

出自(生産牧場)◎、調教◎、騎手◎、血統△、経過◎。

血統を△にしたのは、ただの好き嫌いである。私は種牡馬ダイワメジャーが好みではない。なぜなら、近年G1しかしていない私にとって、ダイワメジャーはマイルまでの種牡馬だからだ(産駒が牝ならそこに「安定性のなさ」が加わる。昨秋から今春に4連勝したミスパンテールは特異タイプ)。

しかし、ここはマイルG1、◎でなくても○でいいはず。一度は○にしてみた。だが、気持ち的にやっぱり△。

…にもかかわらず頭をアドマイヤマーズに決めたのは、調教の慎重さ、言い換えれば工夫を感じたからだった。一週前はジョッキー(デムーロ兄)騎乗でCW、当週は助手騎乗で坂路。それぞれの調教タイムは、場所のみならず課題を変えて追わせたことを示していた。つまり友道師は、漫然と、併せた相手にどれだけ先着できたかで調教とする調教師ではないということであり、送り出された以上、デムーロ兄とマーズは与えられた課題に合格したと考えるのが自然で、賭けでもあった。

アレグリアの項にも書いたように、デムーロ兄はやっぱりここでも狙った馬にタイトな競馬を仕掛けた。私は性根がぬるいので、そこだけがちょっと……である。