【感想】 2018 ホープフルステークス

内田、何しとん?

福永、何やっとん?

びっくりした。スタート直後、3番キングリスティアが離れた最後方を追走。何が起きた!

直線は直線で、2番ブレイキングドーンがMデムーロの乗るサートゥルナ―リアに「どうぞどうぞ」と進路を譲っているように見えて。

前記事に「内枠の騎手3人とも、なんか自分的にはめっちゃ不安あるし」と書いたが、ほんとにそうなってしまった。なんとかしろよ、頭使えよ、日本人騎手

ネット上には、外した人の悲嘆と怒り、当てた人の外した人への嘲笑?が散らばっていた。その隙間に、ヒルダカールの松田とサートゥルナ―リアのMデムーロに過怠金が課されたとの情報があった。

トロールビデオは馬友に見せてもらった。Mデムーロ、昨日は東京大賞典でも勝って、日本を離れるまでほんま好きなようにやりおったな。

 

福永は「どうぞどうぞ」したわけではなかった。Mデムーロが体当たりでこじあける瞬間、族ネタ芸人<いつもここから>の「どけどけーぃっ!」が聞こえた気がした。イタリア人だから実際には ” Rompere i Coglioni !(ロンペレ イ コリォーニ)” だろうけど。

デムーロとサートゥルナ―リアのファンには申し訳ないが、私はこれを勝ちとは認めない。12kgも太って、抜け出すときのあの脚だ、サートゥルナ―リアは確かに強い。しかし、「相手騎手さえ落とさなければいい、馬主的に強いところを怒らせなければいい、今年はこれで最後だからやったれい」的な騎手が、自分がとったポジションの旗色の悪さを物理でカバーするやりかたが気にくわない。もちろん、それを通用させ続けてきた胴元と、胴元と慣れあう集団の責任はかなり大きい。Mデムーロが制裁点の多さの割に騎乗停止裁定が少ないのは、裁定委員の目が勝利という結果に目くらましされてるのではないかと勘繰りたくなるほどだ。相手馬の脚が明らかに無い場合だけでなく、追い出しのタイミングを測っていたり、エンジンのかかりが遅い馬(これがMデムーロにはモタモタに見える可能性はある)にも近接斜行等で進路妨害をするのだから、非常にタチが悪い。

 

2着アドマイヤジャスタの騎手ルメールはMデムーロとは対照的だ。ポジション取りや追い出しタイミングのミスがないわけではないが、そのミスを他馬に不利をこうむらせて「無かったこと」にすることがとても少ない。

2018年度の騎手制裁点では、Mデムーロ 71点に対し、ルメール 36点。

制裁率では、Mデムーロ 3.28%に対し、ルメール 1.81%。

          (上記数字は二次資料 2018年 より)

JRA競走騎乗数は、Mデムーロ 640鞍、ルメール 772鞍だから、ルメールのクリーンさは際立っている。

日本人にとっての競馬は品格が問われるようなものじゃなく、所詮バクチでしかない。それでもJRA(胴元)が公正を謳いたいなら、ルールをもっと明確化し、対象者の身元引受人が誰だろうと、対象馬の馬主が誰だろうと一律に制裁を厳しくしてはどうか。「勝ったと思ったら降着になりよって大損こく」のもバクチなら当たり前で、バクチやる人間はそれくらい覚悟の上だし、職業的に投機としてやってる人間だって、生き物投機の性質である不確実性に振り回されるのは先刻ご承知なはずだ。裁定が ‘どういうわけか曖昧’ だから、バクチや投機として競馬をやる側の覚悟が中途半端になる。

 

ニシノデイジー3着は仕方がない。あのスローペースを団子状態で運ばれては、外に出せるタイミングがなかった。「1枠1番はわかっていたことだし、馬を引っ張り通しにするよりは道中の位置を下げてでも外に回せばよかったのでは?」は、経験より1ハロン距離が延びて、最後に坂が控えている中山では冒険すぎる。勝浦騎手はリーディングで15位以内に入ったことがない。前が開くのを待つしか手段が他になかったに違いない。

もし、ニシノデイジーに巧い騎手が乗っていたら、スタートがよかったニシノデイジーを、デムーロが先頭になる前の2番ブレイキングの進路に(ふさぐことなく)つけ、徐々にデムーロの後ろに回っていただろう。そうして3コーナーの手前で8番アドマイヤジャスタの後ろに出す。……外野の素人が想像でつくった ‘たられば’ だが、不可能ではない。

どこでどうすればよかったか、勝浦騎手にはレースVを腐るほど見直して、進路取りに進展をみせてもらいたい。引き出しを多くしておいて、中山の本番では逃げたっていいのだ。

 

4着コスモカレンドゥラの戸崎騎手は、Mデムーロの策略にハマってしまった。一旦はMデムwithサートゥルナーリアが先頭に立ったのだから、そのまま先頭で標的にしちまえばよかったのだ。なんでデムーロに促されて先頭に立つんだ。素直か!

「押し出されの逃げ」の形になったデムーロが、ペースをどう運んだかはわからない。わからないが、どのみち勝利はサートゥルナ―リアのものだったとしても、逃げで勝てた気分の良さは2歳馬には麻薬のようなものだ。ことに、この馬サートゥルナ―リアは遺伝的にプライドが高く、興奮しやすい気性である。ちょっと扱いにくい馬にしてあげてもよかったのではないか。

 

5着ブレイキングドーンは受けた不利が全て。戦後の日本競馬の中で、意図的にこすられて跳ね飛ばされた馬がそのあと盛り返して加害馬より先着した例を、私は寡聞にして知らない。ただMデム氏は自分より格上と感じる相手にはほとんど荒い真似をしないから、福永氏、Mデム氏に舐められているか嫌われているのだろう。

 

6着ヴァンドギャルドも、Mデムwithサートゥルナーリアに不利を受けた1頭である。

それだけでなく、直前、松田騎乗のヒルダカールに押されて内に追いこめられる不利を受けている。それによってヴァンドギャルドの内にいたMデム(以下ミルコと表記)が連鎖的にさらに内に押し込められ、万事休したMデムwithサートゥルナーリアは、福永ブレイキングをドーンし、Cデムーロ(以下クリスチャンと表記)が騎乗するヴァンドの進路に強引に入る手を選んだ。

クリスチャンがミルコの弟なのは、競馬をやってる人間なら誰もが知っている。だが、ミルコは弟をも不利の巻き添えにした。公平っちゃ公平。「俺が俺が」の軸はブレてない。

同じヒャッハー体質、調子乗りでも、クリスチャンは普通の調子乗りかもしれない。本年の日本での騎乗数142に対し、制裁はゼロ。アヴドゥラは騎乗数112に対し、制裁6である。

記憶では、今年モレイラ(だっけ?)に悪質なタックルを受けた時、クリスチャンは日本人騎手なら落ちていたところを、すぐに体勢を整えて持ち直していた。彼の騎乗技術やフィジカルは低くない。むしろ高いほうだ。ただ多頭数の競馬競走になるとまごまごする場面が増える。「日本の競馬の流れに慣れればどうにかなるかならないか」は何とも言えない。

きょうだいが多いからわかるが、兄(姉)は弟(妹)を支えることもあるけれど、騙したり、必要なことを教えないことがある。カインとアベルの昔から、きょうだいは庇護者の関心を取り合う敵なのだ。クリスチャンに必要なのは、兄依存から少し離れて、ムーアやルメールが勝利したレースVを自分だけで山ほど観て、ポジション取りやコース取りの参考にすることだろう。

「クリスチャンはイタリアに帰れ、代わりにモレイラ戻って来い」との声があるが、私の感情感覚はその逆だ。モレイラとミルコのブロック&アタック合戦を見てみたい気はするが、舞台は日本じゃなくていい。

 

7着には松田騎乗のヒルダカールが入線した。今年のホープフルSの一連の加害被害劇はこの松田の騎乗に端を発しているが、こういうこともあるのが競馬。死んだり怪我したりした人馬がいなかったのは良かった。

そも、年間300鞍以上乗って制裁数ゼロは、今年で言えば、障害騎手の嘉藤年間勝利数13回の高倉稜2人しかいないほど達成するのが難しい。故意、悪質、常習を許すのはどうかと思うが、馬券購入者は自ら、こうした小さな加害被害を「起こるもの」として受け容れなければならない土俵に好んで立っているのである。

ヒルダカールは平坦京都の未勝利を勝ったばかりの日高産の2歳馬である。加害馬にはなったが、直線の走りを見て、「案外やるな」と感じた。血統は、ヴィクワールピサ(ネオユニ×マキャベリアン)×メジロマックイーン×カツラギエース×ダンシングキャップ。母系をさかのぼると、小岩井農場の基礎輸入牝馬アストニシメントにたどりつく。古い母系だが、上手に育ててもらえたら古馬になって面白いと思う。

 

検討していて、能力的に期待を持った一番手のキングリスティア8着。これの不安は、「前走新馬勝ちのキャリア1戦馬」ということではなく、川田から手替わりの内田という点だった。ゲートで立ち上がった時にスタートが切られて、それは内田の責任とは言い切れないのだけども、向こう正面での馬群に追いつくためのガシガシ追いと直線でのガシガシ追い。中1週で参戦の若駒に二度のガシガシ追いが今後どう影響するか。

キングリスティアの後3Fの脚はサートゥルナ―リアと並ぶ1位、35.3だったわけだが、出遅れ追走のここでその脚を見せる必要はなかったし、疲労度も心配だ。先につなげるためには、流すことが必要な場合だってある。内田は生え抜きじゃないから、そういう選択は最初から頭になかったのかもしれない。

 

 

追記 

前記事で、NF系外厩として山元トレセンも入れてしまいましたが、間違いでした。山元トレセンは社台系です。慎んでおわび申し上げます。