2019年 チャンピオンズカップ

今年の出走馬、ノーザン生産馬が5頭、社台生産と白老生産馬が各1頭。全16頭中7頭が社台系。昨年は全15頭中、ノーザン生産馬は1頭、社台生産馬が1頭、白老生産馬が2頭。

毎年、社台と白老は自分とこ生産の上位ダート馬を少数ながら送りだしているから例年通り。やはり、ノーザンだけがわかりやすく数を増やした。

今年2月に、サウジアラビアが世界最高額のダート競走を創設するとのニュースが流れた。

総額18億円超!!サウジで世界最高賞金の新レース創設― スポニチ Sponichi Annex ギャンブル

高額賞金大好きノーザンなら必ず食いつくだろうと思ってた。中東の政情が不安定だからどこまで現実化するか様子見が必要だったが、サウジは8月に、アメリカのサラトガニューヨーク州)で公式発表。

来年2・29「第1回サウジカップ」開催、世界最高賞金に― スポニチ Sponichi Annex ギャンブル

「第1回サウジカップ」として2020年2月29日に開催、舞台は首都リヤドにあるキング・アブドゥルアズィズ競馬場のダート1800メートルでフルゲートは14頭、総賞金は2000万米ドル(約22億円)、1着賞金は1000万米ドル(約11億円)になるという。主催者は1月のペガサスワールドカップ、3月のドバイワールドカップの中間に行うことで、世界のトップホースの参戦を見込んでいるとのこと。

このオイルマネー豪華賞金レースまであと2ヶ月。今年、凱旋門賞参戦にあたってノーザンがイギリスに拠点を置いたのも、サウジアラビアへの輸送が容易で、中東情勢をいち早くうかがいやすい情報国家だからだろう。無駄のない拠点づくり。さすがだぜ、ノーザン。

 

というわけで、今日のG1チャンピオンズカップはクリソベルが不動の軸。

ゴールドドリームとチュウワウィザードの調子がとても良く、最内には、厩舎的に社台系馬主の信頼度を上げたいマツクニさんが今もっとも不安のない騎手マーフィーを確保したタイムフライヤーがいて、唯一の関東馬サトノティターンは早々に中京競馬場入り(木曜)して万全の体制(ちなみにこのサトノ、1週前調教が上々の左回り巧者である)。古馬の布陣がすごいからクリソベルは良くて3着かもしれないが、昨年の覇者ルヴァンスレーヴと同じ3歳ながら、斤量は55kgと古馬より2kg軽い(ルヴァンスレーヴは56kgでの戴冠だった)。

しかも、内有利と言われるだけに、ノーザンをはじめとする社台系馬が6枠11番から内に揃う中、やはりノーザン生産のクリソベルは内外馬の様子をうかがえる5番枠だ。

なお、12番から外には日高の中小・個人牧場生産馬が並び、非ノーザンの星インティは4番枠ではあるが内にチュウワウィザード、外にクリソベル、福永と川田を使って武インティを潰しにかかっていると見られてもおかしくない配列になっている(インティおよび武田氏が憎い上に、武を中心にした栗東騎手会潰しの意図もあるのか?…笑)。

本日午前10時現在、1番人気はクリソベル、2番人気はゴールドドリーム。前走後にノーザン外厩に放牧に出されていたのはこの2頭だけで、いずれも「しがらき発→JRA栗東トレセン」である。みなさんよく知ってるわぁ。

 

まぁ私はクリソベリルが平坦巧者なのを願いつつ、狭い地方レースを走ったことでレースに嫌気がさしちゃった神経質なインティのメンタル復活を祈ると同時に、日高の中小・個人牧場馬の応援に回ることにする

【感想】 2019年 ジャパンカップ

かつてインタビューで、「競馬は馬7、人3ですよ」と言った騎手がいる。彼は、事実以上に自分の腕を持ち上げられる(=常に神がかり的好騎乗を期待される)ことを嫌って「レースは騎手の力だけで勝てるようなもんじゃないですよ」と言いたかったのだろう。しかし実際、レースには「馬5、人5」、条件戦では「馬3、人7」は確実にあるし、場合によっちゃ「馬2、人3、運5」だってある。

今年のジャパンカップ勝ち馬の場合は「馬5、人5」だろう。エリザベス女王杯マイルチャンピオンシップもそうだった。

勝利の瞬間はなぜか美しい。人馬一体が顕現したように映る。この美しさも、サラブレッドという生き物が付帯的に持つ美しさのひとつなのだろう。

 

優勝(1着)スワーヴリチャード。これはもう「おめでとう!」だ。鞍上のマーフィーは巧かった。今さら言うことではないが、さすが “東京コースのマーフィー” 、道中は前過ぎず後ろ過ぎず、直線ではカレン津村の外を突こうとして「難しい」と知るや内にスパッと切り替えた。鞍上の指示に従うことをしっかり躾けられた馬は、鞍上の迷いを自分のこととして迷い、場合によっては混乱してしまう。『いい加減な指示は出さない』――勝っても負けても馬乗りにはこれが大切な基本で、スワーヴリチャードは今回とてもいい鞍上に恵まれたと思う。

2着レンブーケドール。今年のジャパンカップで一番難しかったのはカレンの取捨だった。私は買えなかった。“最内は水を含んで荒れている” という先入観で不安が先立ってしまった(確かにコーナーは荒れていた。が、直線は芝がところどころ剥がれていたものの、状態としては乾きが早く、重というほどでは無かったようだ)。カレンブーケドールは勝ち馬に競り落とされて4分の3差の2着。津村にとっても陣営にとっても悔しい2着だが、直線のたたきあいで、素人目にも、馬だけでなく津村自身がまさにパワーアップしているのがわかった(レース後、「カレンに乗ってたのが外国人なら勝ってた」と呟いた競馬ファン?がいるが、それならビュイックでも乗せて二ケタ着順にするがよかろう)。津村は33歳、身長165cm(JRA公式)、さる筋に囲い込まれていなければ、「次代の日本人騎手のエースはこの男」と目されてたかもしれない。個人馬主さん、津村にどんどんいい馬を回してやってください<(_ _)>

3着ワグネリアン。不利をこうむるのを嫌ったか、2番枠なのに外に回して仕掛けも遅れ……。どうやら川田は敗者のメンタルに落ち込んでるようだ。オレサマ目力で威嚇してても性根は素直で不器用そう。川田よ、オレサマのままでいいからさ、可愛げのあるオレサマになろうよ。可愛げがあっても脇締めて、足元すくわれないように生きてる見本(先輩)が近くにいるじゃないか。

4着にはびっくりマカヒキ。復活の兆しが見えたとは思わないが、武豊のコメント、「これしかない、というレース」に納得。

5着ユーキャンスマイル。スタート直後に5番と7番に挟まれたのが痛かった。テンから出していく稽古をしていたのに、あれで後ろの位置取りになってしまった。スタミナがあるのはわかってる。だが、だからと言って「直線まで待たないで上がっていけば5着より上の着順になった」かどうかはわからない。そこが競馬の難しいところだ。

6着ダイワキャグニー。これもマカヒキに次ぐビックリだった。逃げたから粘れた面はあるにせよ、7着の菊花賞2着馬とは0.3差。下級条件とはいえダート2400mで2勝してる半兄(アイアムイチバン)がいるのだから、成長と共に中長距離適性が出てくる可能性はゼロではなかった。それを引き出したのは石橋脩の積極騎乗。女性人気の高い石橋騎手だが、ときどきほんとにカッコいいから困る。

7着エタリオウデムーロの不調と調子を合わせるように不振に陥っている本馬、いっそまたデムーロか和田に戻したらどうか。今後も横典続行が決まってるようだが、エタリオウ的にはどうなんだろう?

 

8着以下は割愛。ここで前記事を振り返ってみる。

まずは、ムイトオブリガードの父馬を間違えていたこと。これは恥ずかしい。

次に、ノーザン外厩から帰厩して出走する馬のどれが勝つかと書いたこと。これも恥ずかしい。どれも勝てなかったやないか。勝つどころか良くて3着、悪くてブービー。マーフィーもデットーリも乗らない馬だから調整に熱が入らなかった、てなオチじゃあるまいな。……冗談はさておき、ノーザン外厩に今春までの勢いがない。というか、同じ預託馬でも、重点馬と非重点馬の区別を明確にしたようだ。凱旋門賞のド敗戦をきっかけに、セールのための忖度競馬に内部からも批判があったのかもしれない。

そして、レイデオロだ。騎手がビュイックだから当てにしなかったが、当てにしない以上に、本馬場入場ですでに「あれで外国人騎手?」と思った。馬はいたって普通なのに、表情おどおど、腰が引けてましたやん。芝の重馬場に何かトラウマがあるのか、それともどっかのマフィアに「やらなきゃ意味ないよ」と脅されてたのか。「馬乗リノ経験アリマス、自信アリマス」と牧場に自分を売り込んで、実際にはまたがるのが精いっぱいな牧童見習いのようだった。一体誰がレイデオロの鞍上にビュイックを選んだのか。東京芝(3.1.0.0)、2400芝(2.1.0.0)、重成績(1.0.1.0)の昨年の秋天馬、有馬記念2着馬が11着だよ。体調が悪かったなら、申告して北村宏司か松岡に交代してほしかった。

 

2019年 ジャパンカップ

 

先週のマイルチャンピオンシップはパスした。公私ともにごちゃごちゃした状況で、あんなメンツ(馬・騎手とも)のレース検討や予想は、私の頭では無理だった。そもそも整理整頓ができないくせに、データの整理整頓が必要な競馬をやるってのが間違いなんだが。

帰宅後にyoutubeで観た感想は「池添、怖い!!」。当たり前のことだけど、結果を先に知って観るより、なんの情報もなく観るほうが驚きが大きい。久しぶりに池添の “華” を見た気がした。あとから思うに、池添的には、凱旋門でオルフェに乗れなかった恨み、ブラストワンピースに乗れなかった恨みのリベンジレースだったのかもしれない。

 

さてジャパンカップ。先週のマイルチャンピオンシップと打って変わってノーザン生産馬が大挙出走。全15頭中11頭がノーザン馬。春のクラシックと秋天エリザベス女王杯ジャパンカップと(賞金が上がってからの)有馬記念はノーザンにとって是が非でも獲りたいレース。昨年、14頭中6頭と比較的少なかったのは、ある種の “アーモンドアイ効果” が働いただけのこと。経歴に傷をつけたくない馬が何頭もいるとやりくりが大変だ。

そのアーモンドアイ、今年は香港カップにまわる。おかげで、天候も出走メンツも馬場状態も混沌としている。デットーリやムーアとおんなじレースに乗る津村って何よ、田辺って何よ……いやいやいやいや、そんなこと言うたらあきまへん、これはワールドオールスタージョッキーズジャパンカップ” やさかいに。

最終追い切りで良く見えたのはレンブーケドール、ムイトオブリガード、スワーヴリチャード、ユーキャンスマイル、ジナンボー。次点でまずまずなのがダンビュライト

調教と斤量で選ぶなら、レンブーケドールが一番いい。しかし、未勝利勝ち以来の牡馬とのレースで、不良馬場の翌日の1枠1番。午後1時現在すでに雨は上がっているようで、また母系は荒れ馬場や重馬場もこなせる血筋だが、本馬には未体験の路盤がどう出るか。

ムイトオブリガードは、ハロンごとのペースアップ調教に好感。気がかりは中2Wなこと。2014年から2018年までの5年間で中2Wで馬券になったのは2016年に3着に食い込んだシュヴァルグランのみ。2014年、凱旋門賞帰国緒戦で検疫等もあったのに2着したジャスタウェイなんてのもいるが、あれは変わり種と見ていい。ただシュヴァルもジャスタもムイトオブリガードと同じハーツクライ産駒。ハーツクライの牡馬には叩き2走めの中2Wは苦にならないのかもしれないバカが隣枠の父馬と間違えてましたorz (2019.11.26)

スワーヴリチャードは良くも悪くも、強いのか微妙なのか「よくわからん」馬。これもハーツ産駒。しかし前走より調子が上向きでマーフィー鞍上は追い風だ。

ユーキャンスマイルは今回5頭出しの友道厩舎の1頭。この馬の調教に関して、1週前追い切りがしまいタレで、直前追い切りの時計が遅いことを懸念する向きがある。が、むしろ全体時計がとてもいいことに注目したい。前3走で後ろから行っていたのを、前ポジションに切り替える予行練習のような気がするし、友道師のことだから、休養明け3戦目になるJCの調教でガシガシ追う必要はないと判断したのではないだろうか。

ジナンボーは元気いっぱい。3勝クラス戦だが2走前に不良馬場の東京2000で勝っているのもいい。ただ、今のところ重賞では2000がぎりぎりではないか。ムーアがどこでどう潜りこむかは知れないが、大外になったここでは様子見が無難か。

ダンビュライトは、本質的に寒い時期は苦手と思われるが、鞍上が松若だと走る。愛は寒さも強敵も乗り越えていく……かもしれない。

なお、ワグネリアンルックトゥワイスの調教がさして目を引くものに見えなかったのは、“大一番に備えてテンションを上げすぎないため” の可能性がある。でなきゃわざわざ川田やデットーリを確保していない。想像だけど。

 

というわけで、2着3着に来そうなのはいっぱいいるけど1着が見当たらない今年のJC、単勝1番人気はワグネリアンだが依然として4倍を割れない。

こんなレースで期待馬を1頭に絞るのは無理だ。

無理だが、あえて。そこをあえて。

とするなら

8番レイデオロかな な… … …

レイデオロは、2年前のJCでルメールを背に2着している。4歳になり、秋天を勝った去年こそJC優勝のチャンスだったが、ルメールが確保できないからか(ルメはアーモンドアイに騎乗)JCを回避して有馬に参戦、結果2着。レイデオロは一口クラブキャロットの馬である。レイデオロ担当スタッフや会員の立場になってみれば、チャンスをみすみす逃した口惜しさは強いだろう。「もし本気で口惜しいなら何故パッとしないビュイックを乗せるのか」という疑問は湧くが、そこは無視する(ノーザン的にキャロットの位置づけが低くなってるのかもしれんしね)。

ついでに言うと、出走馬の中でこの中間にノーザン外厩で調整したのは

天  栄…レイデオロ

しがらき…ワグネリアン、ダンビュライト、シュヴァルグラン

NF空港…ジナンボー

らしい。

2歳戦や3歳春のクラシックに比べると外厩のお得感は3割減になるけども、上記の中のどれが勝ち馬になるか、馬券内に何頭が入るか(下半期の古馬混戦ではだいたい1頭)、そういうことも楽しみながら秋の目黒記念を迎えたい。

【感想】 2019年 エリザベス女王杯と腕の長さのうんたらかんたら

結果知って、倒れて寝ていた。

あー疲れた、うー疲れた、おー疲れた。仕事で疲れてたのもあるけれど。

もうあかん。もうあかん。もうどうでもいい。反省することなんかあるもんか。

人気どころから2頭選んで2頭ともコケた。わかってる。みなまで言うな

夜中に起きだして、youtubeでレース映像を観た。それまで、今回の感想記事は死んだフリしてヤメとこうかと思っていた。でもね、映像観たら目が覚めて、やっぱり独り言でも書いておきたくなった。

クロノジェネシススカーレットカラーは前走の疲労が抜け切れていなかったのだろう。他に理由があったとしても、そういうことにしておく。直近の前走評価だけでこの2頭をチョイスした間抜けさは今日で忘れる。そうしよう。

クロコスミアには騙された。もうテンに行けなくなってるのかと思ってしまった。エリザベス女王杯で、6歳牝馬はこの9年馬券に絡むことがなかったし(6歳の馬券がらみはなんと09年のテイエムプリキュアにまで遡る)。それに、いくらリピーターが来やすいレースったって、3年連続はめったにない。G1に限るとほとんどない(というか知らない)。そういやこの馬、去年も騙したんだっけ。個人的には去年はまだよかった、観るだけのレースにしてたから。今年もそうすりゃよかったかな。あ、いやいや、反省はしない。終わったことだ。

クロコスミアが自分のペースで走れた時の粘り強さは、父ステイゴールドや母父ボストンハーバーの特性もさることながら、母系2代母ショウエイミズキの血統的底力によるところも大きそうだ。ショウエイミズキ、なんたって「ナシュワン×サドラー×アホヌーラ」。重い、晩成、長距離血統の三重奏である。これを活かしきれない環境では三重苦となり、早晩ツブす対象になるのだが、ありがたいことに牝系は生産牧場を変えながら日高で脈々とつながっている。ショウエイミズキの母アルヴォラはディクタットの母、祖母パークアピールはケープクロスの母、こういう血統背景の牝馬を輸入した日高の生産者がいたってのも驚きだ。いっそ有志で、この牝系まるごと、配合育成研究会(=保存会)でも開いて日高の明日につなげてほしいんだが、立ち上げ式や懇親会に金と時間を使い、敵味方にすぐ分かれてしまう精神風土があると難しいんだよな、これが。

 

で、勝ち馬ラッキーライラックだ。出馬表の馬柱を見ると

1800m以上戦での勝ち鞍なし。なんだこれは。

1800mでも勝ったことがないんだぞ。東京2400mオークスでアーモンドアイの3着、これを後付けで「本格化前にアーモンドの0.6差なら強い」と考えることができたとしてもそれがなんになる。検討時点で思いつけよ、このバカ。

「いやしかし、スミヨンなら。いやしかし、スミヨンでも」――そう逡巡して “スミヨンだから買ってみた” ことになるのがイヤで予想にも挙げなかった、買いもしなかったエエカッコしいもいることだろう(はい、私です)。間抜けか、貴様

調教師・松永幹夫、強気でしたけどね。ヘヴンリーロマンスがよぎりましたよ、私。

断言しよう

スミヨンなくしてラッキーライラックの勝ちなし

直線の攻防観ましたか? スミヨンのアグレッシヴなコース取りと馬追い、迫力ありましたね。鬼神ですわ。鬼ですわ。夜中の寝ぼけマナコが一気に醒めました。

日本人騎手にはなかなか引き出せない最後の伸び脚。巷では、同じ位置、同じ折り合い、同じ仕掛けをやっても、日本人だと同じようには伸びないと言われている。

でもこれ、果たして「日本人だから」だろうか

もちろん、結論として「日本人だから」とは言える。なぜか。技術レベルの差か、ハングリー精神か、生まれたときから馬になじんでるわけでない環境のせいか。

どちらもそれぞれ少しだけ原因らしいものになっている。でも、それが全てではなく根本原因ではない、と私は見ている。根本原因、それは腕の長さ差だ

はてなで競馬ブログを始めて私が再三書いてきたことに、「日本人騎手と外国人騎手との骨格の違い」がある。はっきり書けばそれは手足の長さ、リーチである。いつだったかルメールと池添との叩きあいでも感じたし、古くはステイゴールドを勝たせた武豊と勝たせられなかった熊沢、直近では今春のヴィクトリアマイルのレーンと戸崎でも感じた。腕に長さがあれば、ハンドリングに余裕ができ、融通が利く。そのうえ、どんな姿勢でも(落馬しかかってたりアブミから足が外れてたら無理だけど)華麗な見せムチが可能になるから馬をコントロールしやすく、ぎりぎりのところで極限の伸び脚を引き出すことができる。

いま日本に来ている西洋系外国人騎手と日本人騎手、その中で同じ身長の者を並べて肩から指先、股の付け根から足が地についているところまでを測ってみたら、十中八九、外国人騎手のほうが長いはずだ。偉い人は「3cmの違いくらいなら誤差の範囲」と言いそうだが、競馬好きなら指の1関節分の違いでも手綱さばきに影響を与えるかもしれんと想像がつく。

手足の長さの不利は、特に競馬の場合、努力や根性では補いきれない。これは騎手自身が痛切に感じていることだろう。その意味で、川田(JRA公式159.0cm…実際は2cmほど低そうだ)の努力には頭が下がるし、藤岡祐介(JRA公式165cm)のチャンスと見るや……な知恵の使いどころに感心する。

昨年暮れ、朝日杯FS感想記事に、『藤岡佑騎手は、競馬において骨格にハンディのある日本人騎手が、西洋系の血を持った騎手に伍するために必要なものが何かを示唆してくれている。』と書いた。どんなトップ選手にも隙ができる。自馬でその隙を狙えるかどうか、読んで判断する能力が藤岡佑は高い(その自在版が少し前の横山典である)。

JRAの理事たちや競馬学校の騎手上がりの教官たちがこのハンディに気づいていないはずはない。わかっていて競馬学校廃止の方向に傾いているのか、それとも「じゃあどうすればええんやー」と手をこまねいているのか(無策)。

競馬学校や現場(美浦栗東)で、身長比の手足の長さを数値化して、数字に応じた操馬技術や操馬具を改良・開発するのは無理なのか。岩田康誠や蛯名、川田が、馬の背中に負担がかかることを承知で『踊り追い』をしていたのは、骨格という決定的なハンディでしてやられることを少しでも少なくするための工夫だった。しかしあの乗り方は、長い間に騎乗者自身も自分の脊椎をやられるだろう。乗馬素人の私が言うのもなんだが、あれよりもうちょっと合理的な工夫はなかったものか。

見た感じ、身長比で平均より手足が長いのは藤田菜七子。身長や足に比べて腕から手先までが長いのは四位。全盛期の武豊が日本ではなくフランスを拠点にしていれば、もしかしたら彼の地でそれなりの地位まで行ってたかもしれない。 と思う。

2019年 エリザベス女王杯

去年の出走表と今年のを比べてみた。

去年ノーザンF生産馬が17頭中6頭、社台系(サンデーRH、キャロットR、シルクR、東京RH、G1RH)一口クラブ馬4頭

今年ノーザンF生産馬が18頭中9頭、社台系(サンデーRH、キャロットR、シルクR、東京RH、G1RH)一口クラブ馬8頭

去年ディープインパクト産駒2頭出走、真ん中あたりの4枠8番と6枠11番にいた。今年5頭出走、いずれも外目から大外の6枠11番~7枠13番、8枠17番と18番にいる。

また、偶然だろうが、栗東滞在の斎藤誠厩舎の2頭が2枠同枠、隣り合わせ。人間では池添兄弟が大外で隣り合わせ(兄の池添騎手は18番レッドランディーニ騎乗、弟の池添学調教師のサラキアは川田騎乗で17番)。

馬齢別では、去年、4歳馬はわずか4頭の出走。でも今年は10頭もいて、うち7頭がゲート番号12番から18番までを占めている

出走もゲートも、狙ってやってるのかと思うほどである。

馬場状態と脚質を考えるに、16番スカーレットカラーかなぁと思う。でも自信はない。とりあえずそこに8番クロノジェネシス秋華賞激闘の疲れが心配だが)を絡めて結果を待ちたい。

 

【感想】 2019年のアルゼンチン共和国杯とみやこステークス

珍しく休みになったので、リアルタイムで東京メインと京都メインをTV観戦。

予想も投票もしないのに、リアルタイムで観ていると、スタート前から妙に気分が高まるのは何故だ。十年ちょっと前までは、「今日は賭けない」と決めてもこのソワソワと高揚感に負けていた。老いにより近づいた今は、金と時間の限界が目の前にあるから抑制が利く。それでも鼓動が早くなり、顔が熱くなるのは止まらない。

 

11月3日、日曜日の2つのレースの感想を一言で言うと、「ちょっと悲しい」。率直に言うと「心が痛い」。こういうとき、「勝ち負けってイヤだなぁ」と思う。矛盾してるのは自分でもわかってる。

 

アルゼンチン共和国杯では、人気で裏切ることが多々あったアフリカンゴールドがホントに1着になれるのか、昨年話題になった障害からの転戦馬、オジュウチョウサンはいったいどこまでやれるのか、この2点に関心があった。

レースは武不在の代打、松岡騎乗のオジュウチョウサンがハナをきり、1000m通過は1分02秒。遅い。松岡はチョウサンに、切れる上がりの脚があるとでも思ってるのだろうか……と怪訝に思っていたら、案の定、直線の上り坂でアップアップ。特に応援していたわけではないが、8歳馬のズルズル後退はやるせないものがあった。

1番人気のアフリカンゴールドは追い上げたものの3着。ペースや展開に左右されやすいメンタルは相変わらずで、はっきりした武器がない。しばらくは微妙な着順が続きそうだ。なお中継では、直線のたたきあいでルメールがポポカテペトルとパリンジェネシスの間を強引に割ったように見えたが、パトロールビデオを見るとコース発見力が凄いだけだった。

 

みやこステークスは、インティが心配だった。単独逃げできないと脆いことが明らかになったうえ、59kgのトップハンデで大外枠。川田が武豊の代理で騎乗するが、武豊と川田とでは骨格(と性格)の違いによる馬アタリが違いすぎることも懸念材料だった。

それでも、「絡まれてもイージーに流せる稽古や重い斤量に耐える稽古をクリアして臨んだはず。掲示板下でも健闘だ」「最悪でも無事ならよい」と、わずかな希望にすがってみたのだが。

とても後味の悪い結果になった。

良の砂ダートなのに3頭で競った結果、1000m58秒9という馬鹿っペースになったことは仕方がない。それで3コーナーを回る頃に踏ん張る気力を無くしていたとしても、まぁ生き物のことだからこれも仕方がない。スミヨンがコーナーで強引に入ってくる、これも予想できないことではない。

問題は、鞍上川田のあの不利アピール。あれで馬を止めるか? 馬はまだ走るつもりでいたぞ。一時(今も?)の四位を彷彿とさせる不利アピールでメイショウウタゲが転げてしまった。とんだとばっちり

インティブレーキにまったく気づかなかった国分自身にもプロ騎手として責任はあるが、馬混みの中で、よっぽどじゃなけりゃ急ブレーキはかけるもんじゃない。念のため、何度もパトロールビデオを観返した。何度もだ。そのうえで、川田のアレはスミヨン(ひいては外国人騎手たち)に対する意趣返しとしか思えなかった。

スミヨンが危険行為をしたのは確かだけれども、ああしなけりゃ裁定委員に危険行為と認識させられなかったからだろうか。

あれでインティが不当に悪者視されるのを私は懸念する。悪いのは馬じゃない

【反省】 2019年 天皇賞(秋)

2着3着を買っていない。買った馬は5着7着。

アーモンド頭で買うからには少点数で勝負するしかなかったが、こんなことならアーモンドの単勝にするか、

“見る” レースにしとくべきだった(´ω`)‥

しかしレース自体は面白かった。私的関心ごとはスミヨンとルメール腹の中の鍔(つば)ぜり合いとアエロリットの粘り。お金は消えたが、見ごたえはあった。

1000m通過は59秒フラット。アエロリットのリズムが良かったせいか、遅いとは感じなかった。6F過ぎてからのペースアップで、形的には実質4Fの追い比べ。だが、最初の1Fはゆっくり(12.8)、あとは11秒台の連続で気がついたら激流になっていた。

勝ちタイムは1分56秒2。実況アナウンサー(?)がしきりに「レコードにコンマ1秒届かなかった」とか「迫った」とか言ってたが、レコードなんかどうでもいい。続けて「造園課の馬場づくりスゲーっ」とでも言うのなら日本の造園技術のアピールになって国益にかなうけど。

 

1着 アーモンドアイは強かった。3歳時の競馬には疑問符がついたが、古馬になってからは文句なし。東京競馬場のマイル~2400mでは無敵だ(安田記念は大きな不利があったから1着に等しいとカウント)。1枠2番でスタートからすんなり、ロス無く最内を回り、直線では、フェアプレーを過剰なほど意識している戸崎の内を抜けて2着に3馬身差つける完勝。あのぎりぎりのところを抜けていける強気かつ指示に素直な牝馬は、そういるもんじゃない。ルメールのホッとした笑顔も印象的だった。これで日本語がデムーロ並みに上手けりゃもっと好感度が上がるのに。

ところで、近ごろの競馬マスコミがアーモンドアイに献上しまくってる『史上最強』の称号。私にはこれ、とても違和感がある。史上と言うからには過去の名馬たちとの比較になるわけで、そうすると、前哨戦やG2を使って本番に臨むローテを組んでそれでも連勝を続けられるかどうか、そこが問題になるし、それで勝ってきた名馬たちに失礼だ。アーモンドアイには『史上最強』よりは『化け物』のほうがふさわしい。もしかすると実体は、外厩から立ち上るゴーストかもしれない。

2着ダノンプレミアム。ここしばらくG1の川田と不利はセットだったが、今回はルメール・武、それに暴虐魔人のスミヨンがいたのに不利を受けなかった。スタートが良かったのに他馬のダッシュにつきあわず、いつもよりやや後ろめに控えたのは、距離に不安があったからか、それとも不利を嫌ったからか。いずれにしても、スミヨンより外の後ろにポジションどりしたのが良かった。先行してアエロリットにつきあっていたら、最後の踏ん張りが利いたかどうか。距離は、小回りコースなら2200まで持ちそうだ。

3着アエロリット。この馬の頑張りは切ない。スピードの持続力と根性をいくら褒めても褒めたりない。目標にされる逃げ馬の宿命と言えばそれまでだが、「あの馬さえいなければ」な、惜しすぎるレースがとても多い。しぶとく粘るクロフネっ娘は好きだし、検討中に「気温が上がれば牝馬2頭あるかも」とは思った。なのに「直線の長い東京2000は……」と、最終的に切った自分が情けない。

4着にはユーキャンスマイル。あんまり強いとは思えない名前だ。でも金子馬だし前走で新潟2000の重賞を勝ってるし(上がり最速)、でも長い距離ばかり使われてたし鞍上は調子がいいとは言えない岩田だし。それがあの流れであれだけ迫るとは。

5着にはワグネリアン。枠がすべて。「わかりきってたのになぜ買ったの?」と聞かれたら、「しゃーないやんけ」と居直ることにする(←答えになってない)。

6着サートゥルナ―リア。この馬のことはホープフル~皐月~ダービーと観てきたので、マスコミの煽り文句ほどには強いと思わなかった。ただスミヨンが怖かった。もしミドルやハイでも持ちこたえられる馬に乗ってたら、勝利騎手はスミヨンになっていただろう。川田ダノンが控えたためにスミヨンはルメールとアエロリットをロックオン。2コーナーでルメールの出鼻を挫き(意図的かどうか知らんが、レース後にそれで戒告を受けている)、ひたすらアエロリットをマーク、狩猟民族の特性をいかんなく発揮していた。誤算はアエロリットを舐めてたことと、あてがわれたサートゥルナ―リアの特性を見誤ったこと。関係者はスミヨンに乗ってもらいたいがあまり、仲人口(なこうどぐち)をききすぎたのではないか。いい面の皮になってしまったスミヨン、接待やおだてに惑わされず自分で各馬の特徴をつかむほど研究熱心になってくれたらいいが。

7着スワーヴリチャード。左回り適性の高さと調教の弾ける動きは嘘だったのか??と疑いたくなる敗戦。負けるにしても、何か特徴(=次のレースの取捨につながるもの)がほしかった。唯一考えられるのは「次走への叩き」。ホンマかどうかは神のみぞ知る。

 

8着以下ではウインブライトとケイアイノーテックの健闘が光った。特にケイアイノーテックにはいつか復活してもらいたい。それまでどうか無事に。