2018年の秋華賞が終わった。

アーモンドアイは強かった。

4コーナーを回って直線を向くところでは、まだ先頭まで届きそうにない位置にいた。そこからしっかり、大きなストライドでぐんぐん差を詰め、先頭でゴールした。レースが終わるとケロッと可愛い目に戻るところがこの馬の最大の魅力だ。

 

こちらの予想以上にがんばったのは2着の13番ミッキーチャーム。頭数の多さは、逃げ脚質の彼女には関係なかったようだ。前3走、逃げ先行で走るたびにタイムを縮め、楽勝してきた馬だから、これぐらいは走れて当然……かもしれない。しかし、そうであっても、GⅠの雰囲気にのまれて余計な力が入って消耗してしまう例は多い。おまけに前2走から斤量が3kgも重くなったのだ。

気になって血統表を見てみたら、母馬リップルスメイドが、競走成績自体は大したことないが、良血だった。リップルスメイドの父はナタルマのクロス持ちの Dansili, 母は1949年1950年のヨーロッパ短距離王者 Abernant のクロス持ち。

ナタルマはノーザンダンサーの母で、 Abernant の子どもは牡馬より牝馬が活躍している。ミッキーチャームのスピードと粘りは、競走馬としてプラスの能力が牝馬に遺伝しやすい血統背景からきているようだ。

生産者の三嶋牧場がどれくらいの生産規模と資本金を持つ牧場か知らないが、社台系でない純然たる個人牧場だとして、そのような牧場にこういう良血牝馬を輸入する資金力があるものなのか。ひょっとすると馬主さんの選択と資金力による導入だったのかもしれない。(なお、リップルスメイドは2017年の種付け後、輸出された模様。3年か4年のリース契約だった可能性あり)

 

13番人気の1枠1番ラテュロスも、前走(ローズS3着)を除いたこれまでのレースぶりからすると大健闘だ。ただ、418kgより少しでも体重が増えるとパフォーマンスがガクンと落ちるのが謎である。418kgなんて、条件戦でもひ弱く見えすぎて声援が飛ぶのに。

ラッキーライラックの9着惨敗は乗り替わりがマズかったんだろうか。オークス以来の出走で体重が増えすぎてても、本質マイラーは鉄砲が利くと思ったんだがなぁ。立ち姿を見るとつなぎが立ってて、血統をざっと見ると母系に Raise a Native の血が濃く入っている(6×6×5)。これがディクタスとマックイーンのニックスを消しちゃったかなぁ、母系8代内にせめて Ksarのラインがもう1本入ってればなぁ……などと妄想するが、そうであればあったで、今度は神経質か晩成すぎて走らない子になりがちだ。いやはや配合ってのは難しい。つなぎの角度と血統クロスから、ラッキーライラックの本領はダートかもしれないと思うが、いくらダートで活躍しても、日本では評価が低い。芝のままでいくならマイル以下戦で買いたい馬である。

 

トーセンブレスの11着はまぁ妥当だ。能力的に、ではない。気性・気分がレースで走る気になってない。牝馬でも牡馬でも人間でも、何かのきっかけでそうなる個体はいる。トーセンブレスは秋華賞の前哨戦、ローズSで大敗した。大敗の理由として陣営は「フケ(発情)」だったとコメントしたが、私はまったく信じてなかった。長距離輸送がキライ、東京競馬場もキライ、中山でしか走りたくない、のかもしれないから、中山か福島で距離を短縮して立て直しを図るしかなかろう。

14着オールフォーラヴも、またちょっと難しい馬である。この馬はいろいろと淡泊なようだ。それは2走前のオークスでも出ていた。長距離輸送の影響もあったろうが、途中で「はーい、負け負け!」と自分で見切ってしまう。持って生まれた能力だけで他より先んじれていた子が、ある日、他馬の気配に気おされて、あるいは、走っても走っても馬群から抜け出せず、「なんでこんなしんどい目ぇして勝たなあかんのよ」と目覚めてしまうのはよくある話。これを精神力で乗り切れったってねぇ、馬に、走るだけじゃない社会的役割を人間が提供できればいいんだけどねぇ(もちろん、屠殺して食肉や肥料にする以外で)。ただ、この馬はトーセンブレスよりは頑固でなく、距離を変え、対戦する相手を変えればそこそこ走りそうな気がするので、そこが救いか。